3Kの取り組みの結果は、Geminiへのログイン率に表れた。2025年1月に約33%だった利用率は、同年12月には80%近くに達し、2026年6月には81%を超えた。機械的な処理に使うライセンスを除くと、7月末時点の利用率は約86%になるという。
森氏は「1人当たり1日30分の業務効率化につながったとすると、全社では年間2万時間を超える削減効果になっていると思う」と述べ、情報システム部門に限らず、各部署が自ら使い道を見つけた結果だと語る。
「『Geminiを使っていいよ』という規定作りと、経営陣の『まずはやってみよう』という姿勢が、数字に表れたのだと思う」(森氏)
業務現場では、AIをどのように使っているのか。Geminiによる議事録の作成や、社内資料を読み込ませられるAIツール「Gemini Notebook」を使った資料作成などが定着しているという。森氏自身は、Geminiに相談しながら、GASを使って「100点を取るまで再受検の通知が届く社内テスト」の仕組みを作った。
象徴的なのが、レシピ開発を担当する社員の事例だ。400件のレシピをGemini Notebookに読み込ませようとしたところ、登録件数の上限にぶつかった。スプレッドシートにPDFを貼って一覧化しても中身までは読み取れず、手作業で400件分をコピー&ペーストするのも途方に暮れる作業だ。
試行錯誤の末にたどり着いたのがGASだった。指定のフォルダにPDFを入れると自動で文字起こしし、スプレッドシートに転記する簡易プログラムを組んだ。そのスプレッドシートをGemini Notebookに連携させたことで、レシピ検索が可能になった。
「ツールに400件読み込ませられないからとすぐ諦めるのではなく、現場が自力で仕組み作りまで行った、ハナマルキ流の裏技だ」と森氏は評価する。
Geminiが日常業務に定着した今、同社が向かうのは「使われるAI」から「自律的に業務を代替する働くAI」への転換である。
ここで新たな課題が浮上した。「Googleドライブ」に保存しているファイルが散乱し、データが部署ごとに分断されるサイロ化が進んでいたのだ。同社は今後、Google Cloudのデータ分析基盤「BigQuery」を使ってデータの結合と整理に着手する。
GoogleのAIエージェント基盤「Gemini Enterprise」のPoC(概念実証)にも取り組んだ。題材に選んだのは「見積もり作成」だ。従来、営業担当者はGoogleドライブ内の複数ファイルを参照して、見積もりに必要な情報を手作業で集めていた。
Gemini Enterpriseを使って開発した「見積作成支援エージェント」は、品目と取引先を入力すると「取引先には3つの支店があります。どちらで調べますか?」と聞き返し、支店を指定すれば過去の取引条件など複数のデータを一括で取りまとめてくれる。
「これに限らず、AIエージェントを作成して、どんどん横展開していきたい。これが価値を生み、イノベーションにつながるのではないか」(森氏)
森氏ら情報システム部門が次に描くのは、データをBigQueryに集約し、Gemini Enterpriseと掛け合わせて活用を広げる道筋である。森氏は「次の3つのK」として、開発を効率化する構築(Kouchiku)、ビジネスモデルを変える革新(Kakushin)、AIと人と組織がつながる協働(Kyodou)を挙げた。
森氏は「AIが特別なものではなく、誰もが使いこなせる時代になってきている」と語り、変化を楽しみながら挑戦を続けるとした。全社の8割がGeminiを日常的に使う状態をつくった今、同社の取り組みは、人に使ってもらう段階から、AIに任せる段階へと移ろうとしている。
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