「指導のために厳しく追及しているのだから仕方ない」「萎縮を恐れていては何も言えない」と思う人もいるかもしれない。しかし、職場で求められる「厳しさ」と、今回の「納得するまで詰める行為」は別物だ。
本来、現場の問題点を厳しく指摘し、周りの不満を代弁して「このやり方はおかしい」と声を上げられるベテラン社員は、組織にとって貴重な存在である。
そうした良い代弁者なら、周囲は「よく言ってくれた」と感じるだろう。厄介なケースは、「そこまで問題なの?」「また始まった」と周囲が感じている場合だ。本人だけが「職場のために言わなければ」と熱量を上げていく。
「私が気になる」と「みんなが困っている」は決して同じではない。厄介なのは、その違いが本人から見えなくなっている場合だ。
ベテラン社員から仕事を教えてもらう新人のケースに話を戻そう。新人の立場からすると、延々と質問攻めされた経験が積み重なると、普通に質問されただけの場合でも萎縮してしまう。
「これは、どうしてこうしたの?」
本来なら単なる確認のやりとりでも、過去に「なんで?」「それは理由になっていない」「じゃあどうするの?」と、質問という形の追及が延々と続いた経験があれば、聞かれた側は「また始まる」と身構えてしまう。そればかりか、ミスを知られないようにしたり、気になった点があっても質問しなくなったり、できるだけその人を通さず仕事を進めようとしたりするようになる。
こうした無意識の過剰な追及は、近年注目されている職場の「インシビリティ(失礼な言動や配慮に欠ける態度)」にも通底する。インシビリティが離職に与える影響については、過去に行われた数多くの研究を統合したメタ分析でも裏付けられている。職場でこうした言動を受ける人ほど、離職意向も高い傾向が確認されている。
また、「質問攻め」をするベテラン社員の問題については、上司や周囲からは見えにくい。
上司はそのベテラン社員のことを「○○さんの言っていること自体は正しい」「仕事もできる」と評価しているからだ。部署の成果がその人の知識や経験に依存していれば、なおさら注意しづらくなる。
部下からすると、「上司に相談しても、『正しいことを言っているだけ』と片付けられる」と感じれば、相談しなくなっていく。気がつくと新人は定着せず、ベテランだけ残り続ける、という構図も起こり得る。
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