海外では、乗用車の自動運転で、AIが歩行者を適切に認識できずに死亡事故につながった事例が発生しています。その場合も、事故の責任を負うことができるのは人間だけです。テクノロジーの進化がもたらす利便性を考えると、AIが活用される場面はますます増えていくと思います。活用範囲が広がっていくほど、想定外の事故や問題が生じる可能性も高まるはずです。
中にはAIが独自に判断する様子が自律的に意思を持って動いたように見え、その結果が想定外の事故につながることがあるかもしれません。
しかし、元をたどれば人間の作為が生み出したものです。それを「AIの暴走」などと表現するのは、人間がAIを不当に擬人化して責任逃れしているようにさえ感じられます。
想定外の事故や過失が生じたとしても、AIを利用した者あるいはAIを開発した者など、責任を負う者を明確に定めることを原則にしなければなりません。
AIが優秀だからとやみくもに業務を任せて、責任所在が曖昧(あいまい)なケースが発生すれば、無秩序な社会になっていく懸念があります。
業務と一緒に、責任もAIに任せられると思っているとしたら恐ろしい錯覚です。AIは人間の業務を減らすことはできても、人間が担う責任までは減らせないのです。
業務委託先に任せているからと、不正行為や業務品質低下まで無視して丸投げできるわけではありません。人間が最終責任を負う以上、AIに任せた業務を確認・検証するという、相当の工数を伴う仕事から解放されることはありません。誰もがAIを使って仕事する時代だからこそ、誰もが、AIに任せた業務を確認・検証し、結果に責任を負う義務を負っています。
職場マネジメントにおいても同様です。採用や人事評価、人員整理といったHR領域でAIの提示をうのみにすることは、人権侵害やハラスメント訴訟につながるリスクもあります。雇用を奪うのはAIではなく人間であることを踏まえて採用、人員配置、業務設計などを進めていく姿勢こそ、AI時代に外してはならない人間の責任だといえるのではないでしょうか。
ワークスタイル研究家。「実務×調査×生活」の横断的見地から、最適な働き方に関する提言を行う。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒。20年以上に渡り、人材サービス企業の役員・管理職として事業現場から管理部門まで幅広い領域に従事。『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、厚生労働省委託事業検討会委員・技術審査委員などを務める。『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層のべ5万人以上の声を調査・分析。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演・執筆多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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