生成AIに業務委託 必須になる「任せ上手」のスキルとは?働き方の見取り図(1/3 ページ)

» 2024年07月10日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

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AIに「代わられない」営業組織

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【概要】AIは急速に進化し、2040年には多くの営業業務を代替しうる。では企業は何に投資し、何に取り組むべきか? AI が営業組織に及ぼす影響、具体的な対処法など人とAIの共存に関する最適解を紹介する。

 生成AIの登場によって、日常で目にする文章やイラスト、動画などにもAIが作った物がいつの間にか含まれるようになりました。「これはAIが作ったんですよ」と言われないと見抜けないほどのレベルです。

 ただ、AIが作成したコンテンツへの受け止め方は、人によってさまざまです。

 「残酷な天使のテーゼ」などで知られる歌手の高橋洋子さんは、参加予定だった音楽イベントのチラシなどが生成AIの製作物であったことを受けて「アーティストとして向き合うことができない」と出演辞退し、賛否両論を巻き起こしました。

 この一件は、AIというツール使用の可否が、人の持つ価値観の違いによって大きく左右されることを改めて示したと言えます。

 職場で生産性向上が声高に叫ばれる中、AIのように進化したツールは心強い存在です。一方で、使い方を間違えると波紋を呼ぶ怖さと表裏一体でもあります。どんどん機能が進化していくツールと、私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。

進化が著しいツールにどう向き合えばよいのか。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総研』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約50000人の声を調査したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


Wordが「手抜き」と批判された時代も

 「アニメを深く愛する皆様の気持ちを最も大事にしたいと思っております」

 6月19日、高橋さんはこう記して自身の思いを投稿しました。イベントの実行委員会も同じ日、Xで「クリエイティブを愛する皆様の気持ちを汲み取れなかったことに気付き、実行委員一同深く反省しております」と投稿し謝罪。チラシやWebサイトで使用していた画像は、イラストレーターが制作したものに差し替えたことを報告しました。

 アニメのことを大切に思う気持ちはイベントを主催した側も同じだったとしても、目指す姿が主催者側と高橋洋子さんとの間で異なっていたことが伺えます。利用するツールに対する考え方や価値観の違いが人によって大きく異なることを示す、印象的な出来事であったと感じます。

 技術の発展に伴い、あらゆるツールが特定の機能において人間を凌駕(りょうが)しています。早く移動しようとすれば自転車や自動車を用いた方が、走るよりもずっと効果的で確実です。文書を奇麗に作成しようと思ったら、手書きよりもWordなどの文書作成ソフトを使った方が読みやすく、入力スピードが速い人であれば手書きよりも早く仕上げられます。

 しかし、転職の際に作成する履歴書などは手書きが望ましいとされることがあります。Wordが世に出始めたころは職場内の資料作成も手書きが当たり前だっただけに、そんなスタンスの方がむしろ主流でした。Wordやワープロを使うと「誠意が感じられない」「手抜きだ」といった見方をされました。

 ところが、職場で文書作成ソフトが使われることが当たり前になり、手書きの文書を見る機会が減るにつれて状況も変化していきます。むしろ手書きの履歴書を送付すれば、かえってWordが使えないと思われてしまうケースもあります。

 世の中の常識や価値観が変わると、ツールの使い方への受け止め方も180度変わります。近年新たに生まれた生成AIなどのツールへの受け止め方も、時が過ぎるにつれて同様の変化が起きる可能性は十分あり得ます。

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