勢いづく出社回帰 テレワークは消えゆく運命なのか?働き方の見取り図(1/3 ページ)

» 2024年06月10日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

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 コロナ禍を機に、テレワークは身近な働き方となりました。その一方で、職場が出社回帰の方針を出す動きも目にするようになりました。週3日は出社などハイブリッドにしているケースもあるものの、コロナ禍で緊急事態宣言が発出されていたころとはガラリと変わり、通勤ラッシュ時の公共交通機関はコロナ前と同じような混雑ぶりです。

 「出社するのはイヤ」「満員電車はしんどい」――といった声がネット上などで見られる一方で、「無限に作業することになる」「サボりたいだけ」などテレワークに対する否定的な声もあります。

 日常の景色がコロナ前とほとんど見分けがつかなくなっている中、テレワークは消えていくのでしょうか。

出社回帰でテレワークは消える? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総研』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約50000人の声を調査したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


テレワーク=ノンアルコールビール? その心は

 日本生産性本部の「第14回 働く人の意識に関する調査」によると、2024年1月のテレワーク実施率は14.8%。4カ月連続で減少し、調査開始以来、最低となりました。最初の緊急事態宣言が発出された2020年5月の31.5%と比較すると半分以下の数値です。

 コロナ禍が発生し、誰がいつどこで感染するかも分からないパニック状態の中、テレワークへの切り替えには、社員の健康や命を守りつつ、事業を存続させる手段として大きな意義がありました。しかし、強引に切り替えたケースも含めて、多くの職場がテレワークを経験したことによってデメリットも見えるようになりました。

 その最たるものの一つは、社員が職場に集わなくなったことで、その場にいるからこそ得られる臨場感を共有しづらくなり、グルーヴ感(ノリや高揚感)が醸成しづらくなったことです。チームの目標達成を喜び合ったり、難易度の高いプロジェクトに取り組もうと一体感を高めたり、互いにアイデアを出し合って刺激し合ったりしたい時に、社員が同じ場所に集って空間を共有していないと物足りなく感じられがちです。

 リアルタイムに情報を共有するという機能だけを考えるなら、インターネットを介すことで対応は可能だと思います。しかし、映像を通じてスポーツや音楽を楽しむのと、会場に足を運んでその場の空気を体感するのとでは大きな違いがあります。味やのど越しがビールと遜色(そんしょく)ないとしても、ノンアルコールでは酔えないという違いに似ているかもしれません。

 コロナ禍を機にテレワークを経験した結果、改めて全員が同じ場所に集うことの価値を再認識した会社は、社員に出社回帰を求める指示を出したくなることでしょう。会社としては、厳しい競争を勝ち抜いていくために最善の手を打たなければなりません。

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