永守氏は姿見せず ニデック品質不正「844件」の真相、不正のトライアングルを生んだのは現場か、経営か(3/4 ページ)

» 2026年10月09日 07時00分 公開
[桑原俊明,ITmedia]

永守氏「完全退陣」で「物言えぬ空気」一変

 品質不正問題の調査委員会が発足したのは2026年5月13日だが、ニデックが社内での自主点検を開始したのは同年1月8日だ。創業者でグループ代表だった永守重信氏が取締役を辞任し、名誉会長に就任(2025年12月19日)した直後だ。

 ただ、2026年5月14日配信の日経電子版の記事によれば、当初はめぼしい反応がなく、品質不正に関する情報提供が急増したのは4月に入ってからだという。

 1月から4月にかけて何があったかといえば、永守氏が名誉会長を辞任し、完全に経営から身をひいたこと(2月26日)、会計不正の調査報告書が公表され、同時に創業メンバーの一人である小部博志会長ら幹部が辞任したこと(3月3日)だ。

 こうした経緯と照らし合わせると、4月になってニデック社内の重しがはずれ、幹部も含めた現場社員が、不正事案を気兼ねなく告発できる環境になったということではないだろうか。

 全役職員を対象にしたアンケートでは、会社の仕組みの問題点として「上司などに対し反対の意見を述べづらい環境にあったこと」を選ぶ回答者が15.6%に上った。6人に1人というのは決して小さな数字ではない。こうした心理的安全性の欠如が、物言えぬ空気を生み出し、不正を助長し、ここまでの事態を招いたことは想像に難くない。

2つの報告書に見える「トップ責任追及」の温度差

 会計不正問題の報告書と品質不正問題の報告書には、やや違いも見られる。

 会計不正問題の報告書では、ニデックの内部監査部門が他の企業と比較しても充実した体制にあり、会計不正を行う「機会」が抑止された企業ともいえると指摘。そして、「ニデックにおいてはその抑止機能を遥かに凌駕(りょうが)する程の強い『プレッシャー』(動機)が存在していたと言わざるを得ない」とし、永守氏を頂点とする強度のプレッシャーを最大の原因と指摘した。そして「最も責めを負うべきなのは、永守氏であると言わざるを得ない」という強い表現で永守氏の責任を問うた。

 これに対し、品質不正問題の報告書では、永守氏の責任をそこまで強く追及する表現は見当たらない。経営陣からの業績プレッシャーには言及しつつも「永守氏をはじめとするニデックの経営層が業績目標達成を目的とする品質不適切行為などを指示し、またはこれに関与した事実は確認されておらず、上記の経営管理が全ての品質不適切行為などの直接原因となったわけではない」とし、経営層、コーポレート層、BU・拠点層(現場)の3層の「不均衡および連携の不全」に構造的な原因を求めている。記者会見で質問者から「現場がおかしいとしか読めない」との指摘があったのは当然であろう。

 一部の社員だけが作業に関わる会計・決算業務と違い、多くの社員が関わるモノづくりの現場に対して、トップがあらゆることを指示できるはずもないのは確かだ。だからといって、物言えぬ空気を生んだトップの責任に踏み込まなければ、正しい解決の方向は見えてこないのではないだろうか。

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