従来の自動運転は「周囲の物体を認識する」「進路を計画する」「車両を制御する」といった機能ごとに処理を分け、それらを組み合わせて車を動かすのが主流だった。これに対してE2E自動運転では、カメラの映像、ウインカーの信号、自車の走行状態を1つのAIに入力し、ハンドル操作と加減速を直接出力する。入力から出力までを1つのAIでつなぐため、性能はどれだけ良いデータを学ばせるかで決まるという。
このAIは、米NVIDIAの車載用チップ「NVIDIA Orin」の上で動く。走行中の車は、判断や操作の遅延が許されない。データをクラウドに送って処理した結果を受け取って……という時間をかけられないため、判断は車内でリアルタイムに下す必要がある。そのためAIモデルの規模は約1億パラメータと、大規模言語モデルに比べて小さく抑えている。
AIの性能を上げる原動力が、同社が「MLOpsサイクル」と呼ぶ開発の循環だ。人間のドライバーが走行データを集め、前処理とアノテーション(AIに学ばせるデータの正解付け)、キュレーション(データの選別)を経て、AIモデルを学習させる。できたモデルは、机上と実車の両方で評価する。
同社はこのサイクルで、月に約200個のAIモデルを開発している。山口氏は「データの量と質、さらにサイクルを速くすることが、良いAIモデルを作るために必要になる」と述べる。
データを中心に開発を組み立てるこの手法には、実は落とし穴がある。
山口氏は「データ量が10ギガ、100ギガの時には仕組みは回っていた。だが100テラバイト、1ペタ、10ペタとなった時に、同じ仕組みが回るかというと、必ずしもそうではない」と語る。計算パワーを強化しようとGPUを増やしたが、それだけではサイクルは速くならなかった。
原因はデータの重さにある。テキストが中心の大規模言語モデル(LLM)と違い、自動運転のようなフィジカルAI(現実世界で動く機械を制御するAIシステム)は、ファイルサイズの大きい動画を大量に扱う。データの読み書きが追い付かなければ、高価なGPUも力を発揮できない。そこで同社は、計算機、ストレージ、データ転送、学習ジョブの管理を一体で設計し直すことにした。
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