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国産AIのノエトラ・丹波社長「今からでも1位を取れる」 挑むは“母艦モデル”開発、国内基盤での提供 勝ち筋は(1/3 ページ)

» 2026年09月29日 07時00分 公開
[平 行男,ITmedia]

 生成AIの業務利用が広がる一方、その多くは「外国製のAIモデルに頼る」「海外企業のクラウド基盤上で稼働させる」といった状況にあり、自社の管理下にない。社内情報を入れるには、データを外部に出す必要がある。「企業の独自データ」「製造業をはじめとする多様な現場×フィジカルAI」が、AI時代における日本の“勝ち筋”と目される中、この依存は産業の競争力を左右しかねない。

 こうした課題に挑むのが、Noetra(ノエトラ、東京都渋谷区)だ。ソフトバンクや川崎重工業、三菱UFJ銀行など国内44社が出資して注目を集めた。同社は、日本企業が各自のAIを作る土台となる、国産の「基盤モデル」を開発している。

 「自社データを出してまで使い始めたモデルが、どこかのタイミングで『あなたには提供しない』と言われかねない」――Noetraの丹波廣寅社長は、海外のモデルに頼り続けるリスクをこう説明する。

 Noetraが作ろうとしている基盤モデルとは何なのか。日本企業のリスクをどう解決できるのか。Noetraの戦略について丹波社長が語った。

photo Noetraの丹波廣寅社長(筆者撮影)

本記事は、RX Japanが主催したイベント「フィジカルAI Summit」(9月16日開催)の講演セッション「国産マルチモーダル基盤モデルの構築とNoetraが描く産業戦略」を取材したもの。


丹波社長が語る危機感 日本にはまだ「本当に強いAI」がない

 丹波社長によると、日本にはまだ「本当に強いAI」がない。そのため自社データを外部に出してまで海外モデルを使い始めても「モデルの提供そのもの」「モデルを置くクラウドへのアクセス」をいつ止められてもおかしくないという。

 AIは、国家の武器になる。最も優れたAIは開発した国で使い、他者には2番手、3番手のAIを使わせる未来もあり得る。そうなれば、海外製AIに頼る日本はいつまでも1位になれない。丹波社長は「2番か3番のモデルを使っている限り、その結果も2番か3番のものでしかない」と述べる。

 解決策として同社長が挙げるのが、国産モデルによる「モデル主権」だ。日本が自ら管理する場所(ITインフラ)にモデルを置き、他国の裁量で遮断できない環境で使えるようにする。

 社名のNoetraは、ギリシャ語とサンスクリット語を組み合わせた造語で「“知そのもの”を扱う“器”」を意味する。丹波社長は「日本が持っている知そのものを全部入れていくのだという意思を表している」と語る。

「遅いものは何にもならない」 世界トップ級の“母艦モデル”目指す

 Noetraが開発するのは、企業がフィジカルAIや自動運転AIといった個別のAIモデルを作る際に土台となる「マルチモーダル基盤モデル」だ。

 マルチモーダルとは、言語・画像・音声・動画・センシングといった複数の種類のデータを扱えることを指す。基盤モデルの内部には、各データに特化した言語モデルや生成モデルに加え、物理法則や空間把握といった実世界を理解する能力を持つ「ワールドモデル」(世界モデル)も含まれている。

 丹波社長は、多様なデータとタスクを収めた“教科書のようなモデル”を「母艦」と呼ぶ。企業は母艦からデータを抽出して自社のモデルを作ったり、自社データで追加学習(ファインチューニング)したりする。母艦は大きく扱いにくいため、母艦の知識を小さなモデルに移す「蒸留」という技術を使い、用途に合う小型モデルを作ってもらう構想だ。

 目標とするのは、Noetraが自ら設定した「各テーマで世界トップレベルの性能」だ。丹波社長は「性能の悪いものや遅いもの、使い物にならないものを出しても、オプションにも何もならない」と述べる。

 完成したモデルは、学習済みの重み(パラメーター)を公開する「オープンウェイト」の形で提供する。

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