経理AIを導入するに当たり、苦心したのは社内へのセキュリティや費用対効果の説明だった。費用対効果を数字で示し、改善後の姿も見せるのが正攻法だが、AIで業務がどう変わるかまでは想像してもらいにくいと石黒氏は考えた。
そこで、社内で使い慣れた経費精算システムの中でAIが使えるようになったことや、経理部の人員の状況を説明した上で、まず試験的に動かして効果を報告することを提案した。小さく始めることを前面に出し、稟議(りんぎ)の承認を得た。
運用が軌道に乗った今も、AIに任せきりにはしていない。チェックしたい項目をAIが全て拾えるわけではない上、社内規定が変われば該当するルールを直し、例外を見つけて反映する作業も続くからだ。
今のところ、この作業を担えるのは石黒氏ともう1人の社員だという。同氏は「少なくとも1人は、AIと二人三脚でやっていく社員を育てないといけない」と指摘する。
求められるのは、プログラミングの知識ではない。ルールを整理して指示を明確に書き、どの欄に何が入るかといったシステムの画面構成を意識できれば、誰でも対応できるという。
効率化の先に何をするかは、AI導入の稟議でも問われる部分だ。費用対効果だけを示しても「業務が楽になった後にどうするのか」と問われる。空いた時間で何に貢献するかが、説得材料の一つになる。
クラフツの経理部も、その答えを形にし始めている。人員が増えたこともあり、3年前には手が回らなかった監査対応や、開示資料・税務の内製化、子会社の財務分析へと仕事の軸足を移しつつある。経費承認に続き、出張の事前申請をAIが下書きする仕組みなども一部の社員で試しており、使った社員の評判は良いとしている。
最終的に目指す経理部の姿を山頂とすれば、今はまだ4合目ほどだという。使い切れていない機能もあり、効率化の余地は残っている。欠員への対応から始まった経費承認のAI化は、経理部の仕事を変える足掛かりになっている。
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