約3000キロ離れた東京と台北が超高速光通信によってわずか「17ミリ秒」の遅れでつながる。一方、走行する車とクラウドが寸分のズレもなく呼吸を合わせ、交差点の死角がデジタルツインで把握する。こんな世界の実現にむけたカウントダウンが、ついに始まった。
生成AIの広がりを受け、巨大データセンターの新設が進む中、次世代光通信技術「IOWN」の活用が新たにモビリティ分野へと踏み出した。IOWNを推進する国際組織「IOWN Global Forum」は10月にオランダのアムステルダムで年次中間会議を開き、電子空間上に自動車や歩行者などを再現するデジタルツイン技術「Edge Twin」(エッジツイン)を構築する計画を発表した。
そうしたモビリティ・デジタルツインを実現するため、5G(第5世代通信システム)を自動車分野に活用しようとしている国際組織「5GAA」(5Gオートモーティブ・アソシエーション)や、コネクテッドカーの国際推進組織「AECC」(オートモーティブ・エッジ・コンピューティング・コンソーシアム)と提携したことも表明した。
フォーラムでモビリティ分野へのIOWNの活用を推進するアンリツ(神奈川県厚木市)の計測事業グループCTO(最高技術責任者)、ジョナサン・ボリル氏に日本の光通信技術が再び世界を制する可能性について聞いた。
――アンリツがIOWN Global Forumに参加したきっかけは。
アンリツは計測器のメーカーですが、光通信用の計測器も1980年代から手掛けています。IOWNのPoC(概念実証)を行うには客観的なデータを示す必要があり、フォーラムにも早くから参加しました。
約3000キロ離れた東京と台北の間をIOWNの超高速通信技術「APN」(オール・フォトニクス・ネットワーク)で結んだ際、遅延時間が17ミリ秒だと発表されましたが、その計測にもアンリツの装置が使われました。私は普段はスウェーデンにいますが、所属とデスクは神奈川県厚木市のアンリツ本社にあります。
――今回発表されたモビリティ分野でもアンリツが貢献したと聞きました。
モビリティ分野でのIOWNの活用は1年以上前からフォーラムで議論になっていました。生成AIの登場を受け、IOWNをネットワーク分野だけでなく現実世界にも活用すれば、道路での交通事故などを防げると考えました。
アンリツは携帯用無線の計測器も提供しており、モビリティ分野のデジタルツインを構築しようとしている5GAAのメンバーでもあったので、IOWN Global Forumとの間を取り持ったわけです。フォーラムにとってモビリティは新しい分野であり、IOWNを今後、モビリティ分野へ活用する際、5GAAを通して自動車業界からの声を得られると考えたからです。
――モビリティ分野ではIOWNは具体的にどう使われるのでしょうか。
走行や自動運転だけなら自動車に搭載したAIで処理できますが、私たちが運転の際にカーナビを参照するのと同じように、走行ルート全体を確認したり道路の混雑情報を入手したりするにはクラウドにアクセスする必要があります。何かトラブルが起きた場合もリモートにあるAIの力を借りなければなりません。
逆に全ての処理を自動車側に任せず、処理の一部をクラウド側にオフロードすることも重要です。私たちは「AI Computing Continuum」(AIコンピューティング・コンティニュウム)と呼んでいますが、自動車やモバイルネットワーク、クラウドがそれぞれ持っている計算能力を相互につなぎ、柔軟に活用することがモビリティ分野には必要です。
――アンリツとしてはIOWNの実装に今後どのように関わっていく考えですか。
IOWNは「CPO」(Co-Packaged Optics)と呼ばれる光電融合技術が使われますが、その評価や性能確認、製造した装置のテストなどを私たちは担っていきます。IOWNは特定箇所でなく、エンド・ツー・エンドのパフォーマンス(性能)を高めることでその性能を発揮します。
アンリツはデータセンター内に仮想の計測ツールを置くことで、複数のデータセンター間の接続速度を同時に測ることができます。いわゆるフルスタックと呼ばれる通信の全ての階層に対応していく考えです。
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