作業をAIに任せる際に壁になるのが、数字の背景にある文脈の読解だ。AIは計画との乖離(かいり)には一瞬で気付くが、それが良いことなのか悪いことなのかは判断できない。
例えば、広告宣伝費の消化額が計画の50%にとどまり、その分だけ営業利益が増えていたとする。効率よく使えた結果なのか、使うべき先行投資を使い切れなかったのかは、その事業がいまどの段階にあるのかを知らなければ分からない。
MIXIでは、会社の戦略や各事業の位置付け、重視するKPIなどの情報をAIに読み込ませている。前提を覚えさせた上で、打ち合わせの議事録も読ませ、分析結果の良しあしを類推できるようにした。「情報をためておけば、Slackのやりとりも会議のメモもAIが見に行ける」(島村CFO)
同社は、経理財務を含むCFOが管掌する本部全体で、利益への貢献をミッションに掲げる。税金の最適化や不要なコストの削減、相見積もりの徹底といった積み重ねで、最終的にはEPS(1株当たり利益)の向上を目指す。
きっかけは、人的資本を巡る議論だった。人への投資を何で回収するのかを突き詰めると、最後は利益に行き着く。人事部門が「1人当たり営業利益」などを指標に据える中で、売り上げを直接生まないCFO配下の部門も、利益や資本効率への間接的な貢献を目標にした。
ただ、施策がどれだけ利益を押し上げたのかは測りにくい。例えば福利厚生を充実させた場合なら、エンゲージメントスコアが上がり、その先で何が起きるのかをたどる「因果のツリー」を描き、指標化していく。最初は仮説で作り、1年後に実績と突き合わせる。費用の削減だけで費用対効果を語りがちだったバックオフィスにも、自らの施策が利益にどうつながるのかを説明する力が求められるという。
では、利益に貢献する経理財務へと変わるには、何から手を付ければよいのか。島村CFOが挙げるのは、チームでの業務の棚卸しだ。個人がAIで自分の仕事だけを効率化しても、全体は変わらない。業務の流れの中で、AIに任せる部分と人が担う部分をチームで合意することが出発点になる。
MIXIでは管理部門も含め、社内の依頼元にタスクが届くまでの時間をAIでどれだけ縮められたかを可視化している。その成果に応じて評価で報いることも欠かせないという。
決算を締めることに追われてきた経理財務も、作業をAIに渡せば、事業部門の相談に応え、利益への貢献を問われる立場になる。MIXIでは、伸びる事業に予算を足す提案も生まれた。AIに作業を渡すことは、仕事が減ることだけを意味しない。数字を締める側から、数字で事業を動かす側に回るための、時間と余地を生むことでもある。
100件超のプロジェクトを“スプシ管理”→AIで月次業務「70%削減」 MIXI「経営管理」改革の全貌
月末に「600行の承認作業」が集中……「紙とハンコ」「現金手渡し」の経費申請を変えた、老舗メーカーの経理DX
「経理がAI活用なんて、無理」→「作業を99%効率化」 JBCCグループ経理の新リース会計対応でおきた“意識改革”
「全部手作業は無理」 新リース会計対応に追われたアルペン、AIで一次判定「3300→80時間」にできたワケ
2年間で「1万時間」削減 「1円の誤りも許されない」ソニー経理が“まず試してみる”DX集団に化けたワケCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング