100を超えるプロジェクトをスプレッドシートで管理し、管理対象となるデータは約3万件に。月次の数字の取りまとめだけで手いっぱいだった――この課題に直面したのが、SNS「ミクシィ」やモバイルゲーム「モンスト」を手掛けるIT大手のMIXIだ。
同社はこれまで、経営に関わる数字進捗の管理をスプレッドシートで運用していた。しかし、どこかで関数が1つ抜け落ちていても全く気付けないこともあり「そのデータがあっているのか分からない」状況だったという。
これらの課題を解決すべく、同社はAIを活用したスマートな経営管理への転換に取り組んだ。
AI活用以前と比較して月次業務を約70%効率化し、1人当たり月間80時間弱の工数削減を実現。2028年3月までに年間900時間の工数削減を目指している。
MIXIは経営管理の領域でAIをどのように活用し、これらの成果を上げたのか。同社FP&Aインテリジェンス部長の照井英人氏が語った。
本記事は、クラウド経営管理システムを手掛けるログラス(東京都港区)主催イベント「経営企画サミット2026」(7月2日開催)のセッション「効率化の先に何がある? MIXI社が語る、経営管理を「高度化」させるロードマップとは」をもとに構成したもの。
経営管理とは、企業や組織が目標を達成するために必要な活動を計画し、実行して監視する一連のプロセスを指す。ここには、リソースの効率的な活用、戦略の立案、業務の調整などが含まれる。
「ポイントは、自社の経営管理が今どの段階にあるかを把握することと、次の段階に進むために何をすべきかを知ること、この2点にある」
セッションのモデレーターを務めたログラス経営戦略本部長の服部潤太朗氏はこう説明する。経営管理業務には成熟度のレベルがあるといい、以下5つの段階を提示する。
予算進捗の把握にとどまり、その要因分析や今後の打ち手の議論がない状態
【レベル2】取りまとめ経営部門単位での業務、打ち手の報告が主な状態
【レベル3】事後対応経営業績収集プロセスがマクロやシステムで一定程度仕組み化され、分析、考察に時間が割けるようになった状態
【レベル4】事前対応経営予算データベースが整備され、業績収集〜分析が容易な状態
【レベル5】アジャイル経営社内外の先行指標やトレンドから、環境、業績変化の兆候を察知し、常に臨機応変に意思決定する状態
服部氏によると、多くの国内企業はレベル2からレベル3あたりに位置し、予算・実績の集計や報告資料の作成に追われ、分析や経営陣・事業部との対話に十分な時間を割けていないのが実態だという。
AI活用についても「いきなり全体に適用するのは難しい」とし、AIがない状態でも経営管理のオペレーションが正しく機能する体制があってこそ、AIを導入した際の効果が「指数関数的に増えていく」と説明する。
MIXIも、レベル2(取りまとめ経営)の段階で苦労を重ねていた。同社はスポーツ、ライフスタイル、デジタルエンターテインメント、投資など、幅広い事業を展開しており、同時進行しているプロジェクト数は約100件。予算管理する費用科目は、多いもので約100項目に上る。これらを掛け合わせると常時1万件規模のデータを管理する必要があり、過年度比較を含めると、管理対象は2万〜3万件のデータにまで膨らんでいたと照井氏は説明する。
これをスプレッドシートで運用していたため、どこかで関数が1つ抜け落ちたとしても、全く気付けないこともあったという。
「そのデータが合っているのか分からない、どこかでデータが止まってしまう――このような状態に陥った際、それらを一つずつ解決するのに苦労しました」
財務会計の締めから経営へのレポートまで1〜2週間を要する。この間、少人数のチームが朝から夜まで手作業に追われる、といった状態が続いていたという。
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