まだまだ未熟な経営者が、大切にしてきた7つのこと:経沢香保子の「ベンチャー魂は消えない」(3/7 ページ)
20代半ばで独立してから今日まで、とにかく必死に走り続けてきた約16年間だった。経営者としてさまざまなことを経験し、そして多くを学んできた。今回はそこで得たことをいくつかお伝えしたい。
(3)相談し、相談される人になる
「自分でできることには限界があるが、皆とやることには限界はない」
「お客さまに提供できるサービスに限界はない」
新卒で入社した会社では、何事も納得するまで理解しないと前に進めないタイプで、質問、相談マニアだった。自分の中に違和感がある企画書は、そのままお客さまのところには持っていけない性格で、日曜日の夕方に上司に電話してあきれられているほどだった。
ただ、起業してからのほうが、幅広い範囲でクオリティーや結果にこだわらないと生き残れないと痛感している。だから「常にプロに相談する」「自分より優秀な人の助けをかりる」ことを大切にしている。
それにはいくつか視点がある。まずは「自分の方向性や意思を明確にしておくこと」だ。
決断はトップにしかできないし、方向性でぐらぐらしてたり、意思決定を他人にゆだねるような社長は信用されない。従って、相談する際にはできるだけ具体的にして持っていくようにしている。
例えば、前職で上場を目指していたとき、資金調達まではうまくいったが、その資金で採用者数を増やし、アクセルを踏んだ途端、会社は混乱し始めた。私の能力不足に尽きるのだが、それでも「上場したい」という決意は固かった。
そこで、ある上場企業の社長に相談に行き、状況を正直に話すと、「分かった。今から言う3つのことをやれ」と言われた。
「まず、経営幹部を探して、人材が育つ会社にしろ」
「営業部隊を作って、計画的に数字が上がる組織にしろ」
「男女比率を変えろ」(当時トレンダーズは9割が女性の会社だった)
それまで社長である私一人がマネジメントしていたことが限界だったと分かり、そこから半年かけてアドバイス通りに実行し、上場の足がかりをつかんだ。
一方で、相談に乗ってもらえる人間でいようとも心掛けている。そのためには「相手の時間は相手の命である」という意識を忘れないこと。もちろん、できるだけ相手がメリットに感じるような自分、お互いが支え合う関係を最終的には目指すのだが、相手が偉大過ぎてすぐにはメリットを差し出せない場合もある。
そのようなときは、いただいたアドバイスを実行し、結果を出すこと。そして、随時、事後報告して、感謝を伝え続けていくことにしている。ちゃんとビフォー・アフターで変化し、「相談の乗りがいのあるやつ」になれば、心意気のある経営者が応えてくれるようになるだろう。また同時に、後輩の相談にはできるだけ乗るようにしている。そうやって経営者同士、起業家同士の助け合いの循環に貢献できるように意識している。
関連記事
- 私の慢心を打ち砕いたベンチャーコンテスト LaunchPadへの挑戦
2度目の起業ということでマイペースにコツコツやれば、きっといつかは……。そんな私の気持ちを打ち砕くきっかけとなったのが、スタートアップ企業の登竜門、LaunchPadへの出場だった。 - 理想のベビーシッターサービスって何だろう?
「ベビーシッター文化を日本にも広めたい」――。やりたいことは明確に決まっているのだけど、そのイメージを具体的なサービスに落とし込むのは並大抵ではない。私たちのサービスはどのようにして生まれたのだろうか。 - 再び自宅で起業、2回目の挑戦だからこそのこだわりとは?
2度目の起業を決めた私は、同じ思いを共有できる創業メンバーの募集を始めた。そこで思ってもみなかったことが次々と起きたのだ。 - 自ら上場させた会社を辞め、2度目の起業を決意するまで
26歳で初めて創業した会社のビジネスが軌道に乗り、30歳で結婚し、3人の子どもの出産、そして上場。公私ともに順風満帆だった私を、ある日突然、悲劇が襲いました。「何とかするしかない!」。そう心に誓って、困難に立ち向かっていったわけですが……。 - 誰が、次のイーロン・マスクになれるのか
世の中には、先天的にきわめて高い能力を持っている天才児がいる。そんな子どもが、物理学と経営学を学び、1週間100時間のハードワークをこなし、「人類を救う」強い意志を持っていたら、どうなるか。イーロン・マスクになる。 - あなたの会社は? トヨタが踏み切る「配偶者手当の廃止・子ども手当4倍」
トヨタ自動車が配偶者手当を廃止し、子ども手当を4倍に引き上げることで労組と大筋合意したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.