なぜテレビ局はダメになったのか? 変わる視聴率競争:消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方(7/7 ページ)
テレビ局を取り巻く経営環境は厳しさを増している。この背景には、長年にわたりテレビ局と「蜜月の関係」を築いてきた広告代理店が彼らを見限り始めていることが大いに関係するという……。
放送業界の未来図
こうした中で注目したいのが、これまで「三強一弱一番外地」の一番外地と呼ばれてきたテレビ東京、東京MXなどの独立系地方局、BS11などの独立系BS放送局だ。彼らは視聴者に対しては、弱者の立場を逆手に取ったコンテンツの差別化戦略を、広告主に向けては、番組枠・CM枠を商品に見立てたマーケティング戦略(STP+4Pアプローチ)を武器に、生き残りを図っていくことになるだろう。
これら独立局では、アイデア重視の個性的な番組づくりと、マニアックな趣味・嗜好をうまく取り入れた番組編成に力を入れてきた。独立局は、コンテンツの力で、キー局よりも安上がりで、特徴のはっきりとした視聴者を誘引し、視聴者を有望なターゲットと評価する広告主の探索につなげている。CM枠の提供に関しては、比較的長時間の情報提供型CMを重視し、番組へのロイヤルティの高い視聴者を説得して、好意や支持の獲得を狙うことで、CMのコスト・パフォーマンスを高める努力をしている。
テレビ局にとって、黙っていても、誰か(=広告代理店)が客(=広告主)をわざわざ連れて来てくれる時代は終わった。
自ら顧客を探し、その支持を中長期的に獲得していかない限り、顧客から完全に見限られることになる。マーケティングのSTP(顧客の区分、選定、顧客に対する自身の特徴の画定)を使って、ターゲットと定めた顧客に対する視聴率を高めていく番組作りを個々の番組が行わなければならない。そうした複数の番組編成によって、他局との差別化と自局の強みの伸長を、同時に図っていくことが大切だ。
番組内容とCM内容との間のプラスのシナジーを生かせれば、番組視聴者をターゲットとする広告主をテレビ局が探し出しやすくなる。また、CM内容に対しても、視聴者に支持され、広告主の狙いに沿ったメッセージを、テレビ局側から提案できるチャンスも見いだせるかもしれない。
これまでの寡占構造や広告代理店依存の経営体質からいち早く脱却することが、今すぐに求められている。
著者プロフィール
菅野守(すがの まもる)
株式会社JMR生活総合研究所主任研究員。2004年より計13冊を重ねる『消費社会白書』の編集を、創刊以来担当している。消費のマクロ経済モデル分析を得意分野とする。
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