ビジネスパーソンの副業の落とし穴! 知らないと怖い「民泊ビジネスと法律」(3/3 ページ)
もともと不動産投資に関心があり、インバウンド需要の盛り上がりに伴って「民泊ビジネス」に魅力を感じる――というビジネスパーソンも増えているのでは。しかし民泊ビジネスは現状、問題が多い状態にある。“落とし穴”にハマらないために必要な「法律」の知識とは?
期待されていた「特区民泊」
現状では、個人による民泊や小規模の民泊ビジネスは合法で行うことが極めて難しい。違法状態である以上、いきなり運営ができなくなるリスクは付きまとう。「新規参入を考えている企業から相談を受けることも多いが、ちゃんとした企業であればあるほど現状を説明すると『それなら見送るか……』といった反応になる」と語る石井さん。
では、日本で民泊ビジネスを行うのは不可能なのだろうか。2016年に「民泊ビジネス健全化のきっかけ」になると期待されていたのが、「国家戦略特別区域法」。経済の活性化を目指して制定された条例で、さまざまな分野に影響しているが、民泊ビジネスについても13条で触れられている。
特区法13条には、このようなことが書いてある。国が「国家戦略特区」として区域を指定し、その指定された区域が区域計画を策定し、内閣総理大臣から認定を受けると、区域内で旅館業の許可を得なくとも、民泊条例の基準を満たせば「特定認定事業者」の認定を受け、民泊ビジネス(外国人滞在施設経営事業)を行うことができるのだ。
この「特区」は、東京圏・関西圏・沖縄などが指定されており、東京都大田区や大阪府大阪市などは既に適用されている。
旅館業法とは異なり、ワンルームマンションなどの設備でも気軽にできるという点が特徴。多くの民泊ビジネス関係者が、特区での民泊に期待を募らせた。しかし……。
この法律には大きな問題があった。それは「民泊の客が一度に利用する日数が6泊7日以上(7〜10日の範囲内で、各自治体の条例が定めた日数以上)の最低滞在日数制限がある」ということ。6泊7日以上同じ宿に泊まることは、短期旅行需要には向いていない。そのため、海外旅行客を想定していた関係者は大きく裏切られる形になった。
大阪府の松井一郎知事は国に宿泊日数の短縮を要請しているが、短縮されるかどうか、されたとして何日になるかといっためどはたっていない。
申請は行われてはいるが、全国で40件程度。海外在住の日本人が、一時帰国に用いたり、海外からの出張で長期滞在のときに利用するといった使われ方もされているようだが、これまでの旅行客向けの民泊は依然として無法状態にある。
期待の砦「新法」
業界関係者が心待ちにするのが「新法」だ。現行の旅館業法の規制を緩和した新法「規制改革実施計画」の話が持ち上がっている。
5月19日に提出された答申では、「民泊全面解禁」がうたわれた一方、「年180日以内の営業日数を上限とする」という条件が盛り込まれていた。
「新法のポイントは、旅館業法といかに区別するか。民泊を条件なしに解禁すると、旅館業法を守って施設面を整備して運営している業者に不公平感が出てしまう」――といった理由があり、「180日」という日数で区別した条件だ。
海外でも同様の規制緩和計画が実施されており、英国では60日以下、オランダのアムステルダムでは90日。それに比べると日本の180日は長い。
「ただし、英国もアムステルダムも、現実は営業日数がほぼ守られていない。180日の条件を守ってもらえるなら妥当だが、そうでなければ結局旅館業法の違反者が増えるだけ」と石井さんは危惧する。
まだまだ議論や改正の余地がある新法。早ければ今秋の臨時国会にも法案が提出される見通しだ。
最後に、石井さんに民泊ビジネス参入を考えるビジネスパーソンに向けてのメッセージをうかがった。
「民泊関連業者の中には、リスクを説明せず、違法行為を助長するような人がいる。何かがあった場合、リスクを負うのは業者ではなくてホストの人たちだということを忘れないでほしい」
甘い話にお気を付けて。
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