汚名返上を願う! 豊臣秀次は地元に愛される名君だった:「真田丸」を100倍楽しむ小話(1/3 ページ)
豊臣秀吉の怒りを買い、28歳の若さで亡くなった豊臣秀次。“殺生関白”というあだ名が付けられるなど、これまで悪名高いイメージがありましたが、実は地元・近江の人々からは今なお慕われている名君なのです。
「真田丸」を100倍楽しむ小話
この連載では、歴ドル&信州上田観光大使を務める小日向えりさんとともに、NHKの大河ドラマ「真田丸」に登場する人物、あるいは名シーンなどを取り上げて、よりドラマを楽しめるような情報や小ネタをお伝えしていきます。連載バックナンバーはこちら。
編集部F: 先週(7月10日)放送の『真田丸』では、小日向文世さん演じる豊臣秀吉が何度も鬼の形相を見せました。豊臣家に拾(後の秀頼)が生まれ、いよいよ狂気の度合いが増してきましたね。
小日向: 秀吉は、若いときは才気あふれる人物なのですが、晩年は老害といいますか、秀頼かわいさでおかしくなっていくのが少し残念ですね。私は“ブラック秀吉”と呼んでいます。
編集部F: そして、その矛先は、秀吉の甥っ子であり、関白の豊臣秀次に向けられます。ドラマでの描かれ方だと、秀吉の横暴ぶりもすごいですが、秀次も秀次で、もっとシャキッとしなさいよと感じなくもありませんでした。ただ、弟の豊臣秀保が亡くなったのに、喪に服すどころか、それを隠せと秀吉に言われたのはさすがに辛すぎますよね……。
小日向: 秀次はとにかく可哀そうな人でした。小早川秀秋や千利休などとともに、「秀吉被害者の会」のトップメンバーですよ。
晩年には“殺生関白”というあだ名が付けられました。その理由は、殺生が禁止されている比叡山で狩りをしたり、妊婦のお腹を裂いたり、民を的にして弓矢で射たりしたからとされています。そのほかにもいろいろと酷いエピソードがあり、それらによって秀吉から切腹を言い渡されたのが定説になっています。享年28歳です。私と同い年で死んでしまうなんて……。
けれども、こうしたエピソードは多分でっち上げで、邪魔になったから何とか切腹に追い込むために、悪事を働く暴君に仕立て上げたのだろうと私は思っていました。ただ、真田丸を見ていると、秀吉も秀次に期待はしていて、でもなかなか応えられない秀次。堂々としていない秀次に苛立ちが募っていったのかもしれないなと考えさせられました。
編集部F: 真田丸で新納慎也さんが演じている秀次は、とても悪い人には見えませんからね。
小日向: きりちゃんといい感じですし! 私がずっと思い描いていた秀次のイメージそのままです。天真爛漫で、本当に純粋な人だったのではと思います。
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