初代『ポケットモンスター』と「ポケモンGO」、2つの熱狂の共通点とは?(2/2 ページ)
大ヒットしている「ポケモンGO」。その熱狂は、初代『ポケットモンスター 赤/緑』に夢中になっていた頃を思い出す。当時を振り返って見えてきた、初代『ポケモン』と「ポケモンGO」の共通点とは?
自然と通信をしたくなる仕組み
通信をしなくても、ゲーム本編をクリアすることはできる。しかし、プレイしていると通信がしたくなってくる。ポケモンは“進化”して強くなるのだが、150匹のモンスターのうち、別のゲームボーイと通信しなければ進化できないポケモンも存在していた。
初代で“最強”の一角に数えられていた「フーディン」などはその中の1つ。強くてかっこいいポケモンをゲットするためには、友達と通信する必要があった。
また、「赤」と「緑」のバージョンによって、登場するポケモンや出現率に違いがあるのもポイントだった。ポケモン図鑑を完成するために、バージョン違いのソフトと通信し、友達と交換したくなる(交換したポケモンは図鑑に登録される仕組み)。
この「赤」「緑」のバージョン違いを同時発売したのは、ゲームプロデューサー宮本茂さんのアイデアだ。「せっかく交換するのだから、ソフトも赤と緑の2本出してみたら」。この色分けが、のちの「青」「ピカチュウバージョン」、そして「金」「銀」といった新作ソフトにも続いていっている。
制作陣にまんまと乗せられていることを知るよしもなく、当時の子どもたちは盛んにポケモンを交換していた。家で『ポケモン』をプレイしていると、お母さんに怒られる。だから近所の公園で、学校の校庭で、駐車場で――と、毎日のようにゲームボーイを持って外に出た。
レアなポケモンを持っている子や通信ケーブルを持っている子はモテた。そんなに仲良くないクラスメートからも、「今日放課後遊ばない?」と声をかけられていたのだ。
初代『ポケモン』と、「ポケモンGO」との共通点
「ポケモンGO」は、“昆虫採集”という面において、初代の基本に立ち返ったようなゲームだ。そして、初代が「ゲームボーイに最適化されたゲーム」として生み出されたことを考えると、スマートフォンが持つ位置情報(GPS)やカメラ機能から逆算したような設計になっている。
コミュニケーションに関しても、「ポケモンGO」は盛んに生み出している。「ポケストップ」や「ジム」といった人が集まりやすいスポットがあることで、「ポケモンGO」プレイヤーが自然と分かり、「調子はどうですか?」と声をかけたくなるようになっている
また、幸か不幸か、あまりにも不親切なチュートリアル(ゲームの進め方の説明がほとんどない!)によって、「どうやればアイテムがゲットできるの?」「どうすればジムで勝てるようになるの?」「どんなポケモンが強くなるの?」とオンラインやオフラインで聞き合うといったコミュニケーションが発生している。弊編集部でも、1日1回は「ポケモンGOのQ&Aコーナー」が展開されている。
その一方で、スマートフォンの機能をフルに生かせているとは言えない部分もある。1番は“交換”だ。初代から『ポケモン』というゲームの基本となっている交換機能が、「ポケモンGO」には実装されていない。
とはいえ、交換に関しては、今後の実装が予定されているようだ。「世界とつながっている」ことを生かしたものになるのか、それとも「傍にいる人と簡単につながれる」ことを生かしたものになるのか……どういった形になるかは不明だが、どちらにせよスマホの特徴を生かしたものになるはずだ。
初代の裏技、「ポケモンGO」の隠し要素
さらにもう1つ、初代『ポケモン』の有名なエピソードをご紹介しよう。ゲームが発売された当初は、「ポケモンは全部で150匹」と公表していた。しかしあるユーザーが偶然、151匹目のポケモン「ミュウ」を発見した。
ミュウは、ゲーム本編で度々話題にされてはいるが、普通にプレイしていれば遭遇できないモンスター。テストプログラムを削除した後のスペースに、プログラマーが遊び心でデータだけ入れていた、“バグ”のような存在だ。
初代『ポケモン』は、遊び心なのかバグなのか、「レベルを100にする裏技」「コイキングをミュウにする裏技」などが見つけ出されていた。こうした裏技を知っている友達が学年に1人はいて、裏技を使いこなせる子は人気者になった。
当時は、あの裏技は口コミで広がっていたとばかり思っていた。しかし、実はインターネットを介して伝わっていた面もあるのだという。小学生が小学生のために開設したWebサイトもあったりして、“進んでいる”人も存在していたのだ。
現在、「ポケモンGO」の裏技(隠し要素)は数多く発見されている。有名なもので言えば、「最初の3匹を何回もスルーしていると、最初からピカチュウがゲットできる」など。裏技の情報が誰からともなく共有され、プレイしているみんなが知っているのって、ちょっと初代の「ミュウ」に近い。
ちなみに裏技については、デマも数多くあった。「金」「銀」のときには、伝説のポケモンセレビィの出現に関して非常に有名なデマがあり、当時の私は何度も試したが、結局手に入らなかった。
「ポケモンGO」でも、現在ゲームに関する「個体値はXLが強い!」「いや、そうじゃなかった」「ここにはレアポケモンが出る」「そうでもなかった」などなど情報が錯綜中。歴史は繰り返されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 平成生まれが教える、デスクワークでも「ポケモンGO」を満喫する方法
配信されてすぐに巨大なブームとなっている「ポケモンGO」。乗り遅れた! しかも平日は仕事で忙しい! という人向けに、会社にいても楽しむ方法を教えます。 - 業界関係者が「ポケモンGO」の世界的大ヒットを“予測できなかった”ワケ
「ポケモンGO」が世界的な大ヒットとなっている。しかしアプリ業界の関係者は、ここまでのヒットになるとは誰も予想できていなかった。“アプリのプロ”がヒットを見抜けなかった理由とは。 - ファミコンブームの終息と、日本ゲーム業界への提言
1983年に登場したファミコンは、発売から20周年となった2003年に生産を終了しました。連載最終回では、ファミコンブームの終息と、今後の日本のゲーム業界に対する私なりの考えをお伝えします。 - 競合ゲーム機「PSP」の脅威が任天堂社内を変えた
「Wiiのプレゼンテーションを最も多く経験した男」。任天堂の岩田元社長からもそう評された玉樹さん。本連載では、Wiiの開発担当者として、いかに商品を生み出し、世に広めていったか、そのプロジェクトのリアルをお伝えします。