GMS大量スクラップ時代の風に乗るドン・キホーテ:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
総合スーパー(GMS)の店舗再生に定評があるドン・キホーテに対し、ユニー・ファミリーマートが業務提携の検討を始めた。なぜドン・キホーテは注目されているのか。その強さの源泉に迫った。
ドン・キホーテは「モノを買いに行くところ」ではない
その前に、地方百貨店やGMSが立地不適となった理由を簡単に整理しておこう。地方百貨店の場合は大まかに言えば、クルマ社会となった地域において中心市街地自体が交通の結節点ではなくなったため、立地とともに成立しなくなった、と言うことができる。だから百貨店がなくなった地域においても、郊外の大型ショッピングモールは、相応ににぎわっているのである(この問題に関しては地方の人口減少などは関係がない)。
GMSの場合は、若干複雑な経緯をたどることにはなったが、結論だけを言えば、専門店チェーンとの競争に敗れたということになる。忙しい平日には、食品スーパー、ドラッグストア、100円ショップ、カジュアル衣料品チェーンが集結している小型モールに寄って、毎日の生活必需品をできるだけ短時間で買う。休日には、家族で一日時間を過ごすことができる時間消費型の巨大ショッピングモールに滞在するという生活スタイルの人が増えた。このどちらにも中途半端な存在となったのが、一般的なGMSなのである。
こうして集客力を失った百貨店やGMSはやがてスクラップの運命へと向かうのであるが、このような店舗でもドン・キホーテは再生してしまうのだ。なぜかと言えば、ドン・キホーテとは極論すれば、「モノを買いに行くところ」ではなく、「暇をつぶすついでにモノを買うところ」だから、である。
多くの人にとって生活必需品の買い物は必ずしも楽しいものではなく、足りないからやむを得ず補充するという感覚の作業である。こういった人たちにはドン・キホーテは最も向かない店舗と言っていいだろう。
迷路のような通路の両脇には手が届かないぐらいの高さまで商品がところ狭しと陳列されている。その上、とても必需品とは言えないが、なるほどといった面白い商品が各店舗の裁量で編集されているため、見始めてしまえば思わず時間を忘れてしまうような個性的な店舗である。
もちろん時間があるときにはいいが、忙しい人が短時間で目的買いをするには向かないだろう。だが、ドン・キホーテはそうしたショートタイムショッピングニーズの顧客をターゲットにはしていない。ある程度暇があって時間潰しをしながら、ついでに買い物をしたい人に対して宝探しの楽しみを提供しつつ、面白い商品を情報提供して衝動買いもしてもらう、というのがドン・キホーテの基本戦術である。
こうした意味では、ドン・キホーテは小売業ではあるが、それ以上に時間消費空間の提供というサービス業的要素が極めて強い店舗であると言えよう。この点においてまったくの同業と言える小売業は存在していない。強いていえば「遊べる本屋」を標榜(ひょうぼう)するヴィレッジヴァンガードが機能としては似ていると言えるくらいだ。
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