GMS大量スクラップ時代の風に乗るドン・キホーテ:小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)
総合スーパー(GMS)の店舗再生に定評があるドン・キホーテに対し、ユニー・ファミリーマートが業務提携の検討を始めた。なぜドン・キホーテは注目されているのか。その強さの源泉に迫った。
インバウンド需要はいまだ衰えず
こうした特徴を書くと、「それでは時間に追われた多くの人を集客できないではないか」と思われるかもしれないが、まさにその通りなのである。首都圏を例にとれば、食品を安く短時間で買いたい人はオーケーストアに行けばいいし、PB(プライベートブランド)商品でもとにかく安く手に入れたい人はイオン系のスーパーに行けばその目的は果たせる。近所のスーパーでも特売日を狙って行けば、移動時間を短縮して安いものを手に入れることは可能だ。時間がない大半の人たちが、その選択肢にドン・キホーテを入れて考えることは、よほど近隣住民でない限りそう多くはないだろう。
また、ドン・キホーテはナイトマーケットの開拓者とされ、24時間営業の店舗を含め、深夜まで営業していることを基本とし、夜中でもにぎわっているのが特徴だが、そのことも大多数のファミリー層が中心顧客ではないことを示している。ただ、ドン・キホーテは基本的にそんなことは意に介さない。なぜなら、少数派ではあるが時間があって買い物を楽しみたい人をターゲットに、深夜まで総合小売業をやっている店はほぼ皆無であり、競合が存在しないからである。
ドン・キホーテが、オンリーワンの業態であるというのは、世界的に見てもそのようだ。訪日外国人のガイドブックで同社の店舗は日本の見どころの1つとして、その認知度は極めて高い。特に小売業の発展途上段階にあるアジア諸国からの外国人客にとって、こんな時間消費型小売業の店舗を自国で見掛けることはなく、その珍しさから日本に来たら見て帰るべきスポットとして人気が高いのだという。
中国人観光客の「爆買い」に支えられて一息ついていた百貨店が、インバウンドが一段落したことによって計画見直しを迫られている昨今も、ドン・キホーテはほとんど影響を受けていない。当たり前だが、高級ブランド品の本物が自国内や越境ECなどによって手に入るようになれば、遠い日本の百貨店から重い荷物を持って帰る人は減るに決まっている。だが、ドン・キホーテに来店する目的はその店舗空間を体験するということなのだから、訪日外国人の数自体が増加基調である状況下で、客数が減少する理由はない。オンリーワン業態であるドン・キホーテにとっては、インバウンドの恩恵は今後も大きな成長余地として残されているのである。
関連記事
- ゼンショーが小売スーパーを買収する理由
牛丼チェーン「すき家」などを運営するゼンショーホールディングスが小売事業を強化している。昨秋には群馬県の食品スーパー、フジタコーポレーションの買収を発表し、小売事業の売上高は900億円に迫る勢いだ。ゼンショーの狙いとは何か? - イトーヨーカ堂の反撃は始まっている
大手GMS(総合スーパー)が軒並み業績不振だ。ただし、各社の置かれた状況は一律ではなく、起死回生の一手となるカードを持つ企業がいるのだ。それはイトーヨーカ堂である。 - 今、スーパーマーケットが大転換期を迎えた
流通大手の総合スーパー(GMS)事業の不振や、地方を中心とした業界再編など、日本のスーパーマーケット業界を取り巻く動きが目まぐるしく変化している。特集「スーパーマーケットが生き残る道」では、そうした状況下での各社の取り組みなどを見ていく。 - 2016年の小売業界はどう動くべきか?
店舗閉鎖、コンビニとの経営統合……。長らく業績が振るわない総合スーパーにとって昨年は大きな転換期だった。そして今後、小売業界全体はどのように進んでいくのだろうか。専門家が解説する。 - セブンを迎え撃ち ファミマが沖縄で伸び続ける理由
沖縄に訪れたことのある人ならご存じだろうが、街でよく目につくコンビニといえばファミリーマートだ。30年近く前にエリアFCとして設立された沖縄ファミリーマートの戦略が功を奏し、今や沖縄では不動の地位を築いている。その取り組みとは――。 - セーブオンのローソン転換 トップが語る狙い
中堅コンビニエンスストアのセーブオン(前橋市)は2月1日、ローソンとメガフランチャイズ契約を締結し、国内の全店をローソンに転換すると発表。全国規模の大手チェーンへ転換する背景は? そして消費者にはどのような影響を与えるのか? 両社のトップが会見で語った。 - インバウンドに沸く沖縄の小売業、しかし課題も
訪日外国人数が過去最高を記録し、インバウンド消費による好況が小売業界に到来している。特にアジア地域からの大型クルーズ客船が寄港する沖縄ではその勢いが強く、スーパーマーケット各社の業績も伸びている。しかし今後の課題も散見されるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.