市民アスリート集団が開発する健康サービスの“ホンキ度”:ユーザー心理をわしづかみ(6/6 ページ)
ヘルスケアサービスなどを提供する、ネオスという東証1部上場の会社がある。同社のサービスは利用者の気持ちを心底分かっていると人気だ。なぜなら開発メンバーの社員たち自身が市民アスリートとして同じような悩みや課題を経験しているからだ。
市民アスリートならではの共通認識
今後、同社のヘルスケアサービスはどのように発展するのだろうか。
秋元マネジャーは、「ラーニングコミュニティーによる支援をもっと充実していきたい。一人ではなかなか続かないのが、ダイエットや健康管理。多くの人が挫折をせずに継続できるようにサポートしたい」と考える。
古田シニアマネジャーは、「ランナーが利用するデバイス側からの充実も視野に入れたい」とし、ランニングウォッチとしてランナーから高い評価を得ているGARMIN(ガーミン)のサロマ湖100キロメートルウルトラマラソン専用ウォッチフェースを開発。エントリー締切日やレース開始日をカウントダウン表示する機能を提供するといった取り組みも開始している。また、ガーミンを通じて、自宅の金魚にえさを与えられる装置の実験に取り組むなど、発想もユニークだ。
KaradaManagerそのものの機能の充実に加えて、こうした周辺サービスの強化も、利用者のダイエットおよび健康管理の継続率向上につながると言えよう。
「自らがマラソンなどの体験を通じて、継続性の大切さと難しさを熟知しているだけに、そこへのこだわりは、他の部門と比べても徹底している。しかも、それが組織全員の共通認識となっている。だからこそ、わざわざ口にしなくても、利用者の継続性を重視したサービス作りに全員がベクトルを合わせることができる」と星野部長は胸を張る。
これもヘルスケアサービス部のメンバー全員が、市民アスリートで構成される組織だからこその共通認識だと言えるだろう。
「ヘルスケアサービスそのものも長年の経験と蓄積が必要であり、その点では、KaradaManagerをはじめ当社のサービスは先行している。だが、今後、人工知能(AI)をどう活用していくのか、あるいはスマホを活用したサービスの次には、どんなデバイスとの連携が必要なのか、そこでどんなサービスが提供できるのかということを考えれば、まだまだ先は長い。マラソンに例えれば、まだ走り出す前のウォーミングアップの段階に過ぎない」(星野部長)
「もはや、先頭集団の一角」という言葉を期待していたが、星野部長はまだ走り出す前の状況であるという。正直驚いた。だが、そこにすべての人がダイエットや健康管理を継続でき、100パーセントの人が目標を達成できるサービスに挑むという強い意思が込められていることを感じた。
著者プロフィール
大河原克行(おおかわら かつゆき)
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、AVWatch、クラウドWatch、家電Watch(以上、インプレス)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp(KADOKAWA)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで連載記事を執筆。夕刊フジでは「まだまだスゴい家電の世界」、中日新聞では「デジモノがたり」を連載中。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。
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