ローソンの「売上高1割アップ」が困難な理由:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
ローソンが発表した中期経営計画では、各店舗における1日当たりの売上高を1割以上引き上げるという高い目標が掲げられたが、実現はそう容易ではない。ローソンが抱える課題から、コンビニというビジネスの特徴について解説する。
飽和市場でどう戦うのか
売上高を1割アップさせるためには、来客数を1割増やすか、顧客1人当たりの売上高(客単価)を1割上げるか、あるいは、両者の組み合わせで1割増を実現するしかない。分かりやすいように、来客数を1割増やす話と、客単価を1割上げる話に特化してみよう。
現在、コンビニの市場は飽和状態となっており、来客が見込めるエリアには、ほぼ限界まで店舗がひしめき合っている。このような状況で特定のコンビニだけの売上高を1割増やすためには、他のコンビニから1割分、顧客を奪ってくるしかない。人は毎日通うお店を簡単には変えないので、よほど魅力的な商品がなければ、わざわざ他の店にはいかないだろう。仮に画期的な商品を登場させたとしても、他店がすぐに模倣するので、顧客を奪い、それを定着させることはそう簡単ではない。
客単価の1割アップも同じである。コンビニの平均客単価は数百円なので、客数が変わらない状態で全体の売上高を1割上げようと思った場合には、ほぼ全ての客に数十円の商品をもう1品余分に買ってもらう必要がある。値段が数十円の商品は少ないので、半分の顧客に百数十円の商品をもう1つ買ってもらうといった方が分かりやすいかもしれない。
自分自身の行動に当てはめて考えれば分かりやすいが、ある特定のコンビニ行ったときだけ、もう1品、必ず余計に買ってしまうほど魅力的なお店というのは、ちょっと想像しにくいのではないだろうか。
つまり、来客数を1割増やすことや、客単価を1割上げることは、実はとてつもなく難しいことなのだ。実際には、来客数を5%増やし、客単価も5%上げるといった形で1割の売上高アップを目指すことになるが、難易度が極めて高いという点では同じである。
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