ローソンの「売上高1割アップ」が困難な理由:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
ローソンが発表した中期経営計画では、各店舗における1日当たりの売上高を1割以上引き上げるという高い目標が掲げられたが、実現はそう容易ではない。ローソンが抱える課題から、コンビニというビジネスの特徴について解説する。
ローソンはファストフードを強化
ローソンの中期経営計画では、高い数値目標を実現するため、商品力を強化する方針を打ち出している。具体的には弁当やサラダ、おにぎりなどファストフードを拡充するとしているが、これは特にローソンに限った話ではなく、各社が力を入れたいと考えている分野だ。
ファストフードは売上高に占める割合が高く、しかも利益率が高い。またこうしたファストフード類は、他の商品の「ついで買い」を誘発するので、さらに売上高アップに貢献する可能性がある。ローソンはこれまでファストフードが弱かったので、うまくいけば売上高を大きく伸ばすことができるかもしれない。
一方、ファストフードは賞味期限が短く、余った商品は全て廃棄しなければならない。売り切るだけの客数が見込めなければ逆に経営全体の足を引っ張ってしまう。
業界トップのセブン-イレブン(以下、セブン)は、良い立地で出店しているケースが多く、そもそも来客数が多いという特徴がある。このためファストフードなど賞味期限の短い商品も思い切って仕入れることが可能となっている。これがセブンの日販が高い理由である。
店舗の売上高は、その店舗が本来持っている潜在顧客数と商品力のかけ算で決まってくるが、顧客数と展開できる商品には実は密接な関係がある。来客数が少ない状態では、展開できる商品に制限が出てくるため、良い商品を並べたくても並べられない。単純にもうかる弁当を増やせばよいという話にはならないのだ。
セブンほど来客数が多くないローソンがファストフードを強化し、売上高を1割増やすためには、もう少し具体的かつ総合的な戦略が必要なのだが、今のところその全体像は見えていない。2021年までは多少時間があるので、今後、商品構成の大胆な変更など、思い切ったプランが出てくるのかもしれない。竹増社長の手腕が問われている。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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