更地になったシャープ旧本社に何を思う:解体工事が進む(2/3 ページ)
大阪市阿倍野区のシャープ旧本社が更地の状態に。当初の計画では、8月31日までには解体工事が完了する予定であったが、工事は前倒しで進んでいるようだ。この光景に嘆きの声も。
創業の地は大阪ではない
シャープが、大阪市営地下鉄御堂筋線の西田辺駅近くに本社を構えたのは、1924年9月1日。関東大震災のちょうど1年後だ。
多くの人がシャープは関西発祥の企業と思っているかもしれないが、実は、シャープの創業は、東京都墨田区本所であり、早川氏は東京都中央区の生まれ。東京・京橋にあった実父の生家は、江戸時代から続く袋物問屋であり、ちゃきちゃきの江戸っ子であったことはあまり知られていない。
創業から12年間は、東京に本社を置いていたのだが、関東大震災により、工場を焼失。このとき早川氏は、妻とともに、8歳と6歳になる2人の子どもも亡くした。さらに、追い打ちをかけたのが、大阪に本社を持つ販売委託先からの特約契約金の返済と、事業拡張金として融資していた合計2万円の返済を求められたことだった。
金融機関が、震災後の復旧に向けて、衣食を優先する施策を取る中で、シャープは資金調達ができず、同社への特許の無償使用や技術移転などを条件に、返済を免除。早川氏は東京から14人の技術者を連れて大阪に向かい、家賃42円の2階建ての家を借りて、全員がこの家で寝泊まりし、大阪での生活を始めた。
早川氏は、後に自らの著書の中で、「東京生まれの私が大阪へやってきて、事業を新たに興したというと、ちょっと派手に聞こえるが、体のいい都落ちであった。時の勢いで、やむなく大阪にやってこなければならなかった」と記している。
だが、商魂に徹した土地柄や、地位や毛並みを問題にしないという風土が気に入り、早川氏は、大阪での再起を図ろうと決意。借家の近くにあった荒物屋の主人の紹介で、大阪の南の郊外に良い土地があると聞かされて出向いた場所が、シャープ旧本社があった大阪市阿倍野区長池町だったのだ。土地の広さは235坪。坪6銭で10年間借用する契約だったという。
関連記事
- シャープ、PC事業に再参入か?
ホンハイ傘下のシャープがPC事業に再参入する可能性が出てきた。今夏、ホンハイとの共同開発でプロジェクター市場に再参入する予定で、今後はサーバやPCなどの取り扱いも検討するという。 - 鴻海からの“心遣い”を、シャープはどう受けとめたのか
台湾の鴻海によるシャープ買収決定後に開かれた共同会見において、鴻海・郭会長兼CEOはシャープのイノベーターとしての歴史をべた褒め。ところが、両社の経営に対する基本姿勢はまるで異なるものなのである。 - 富士通が島根でロボット生産に踏み切った理由
富士通のPC生産子会社の島根富士通が、ロボットの生産に乗り出した。PC製造で培ったノウハウなどを生かすことで、新たな事業として立ち上げ、今後のビジネス成長のドライバーにしたい考えだ。 - エプソン、国内プリンタ事業拡大へ大勝負
セイコーエプソンおよびエプソン販売が、大容量インクタンクを搭載した新製品を投入する。初の日本市場専用モデルということで、同社にとっては国内プリンタ事業の転換に大きな一歩を踏み出すものになるはずだ。 - 4年で1億台以上も消滅! 凋落するPC市場に未来はあるのか?
PC市場の縮小が止まらない。米ガートナーなどの調べによると、この4年でPC出荷台数は1億台以上も減少、市場規模は約3分の2になってしまった。このままこの市場は縮小の一途を辿るのだろうか……? - 売上高53億円を超えた! 「オフィスグリコ」が成功した3つの理由
皆さんの会社には「オフィスグリコ」はあるだろうか? 江崎グリコがこのサービスを本格展開し始めてから十数年のうちに売上高は17倍以上の53億円に。その成功の秘密に迫った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.