9階建ても登場 都心で多層階の家を仕掛けるパナホーム:その狙いは?(1/4 ページ)
3階以上の多層階住宅の住宅着工棟数が増えているのをご存じだろうか。特に土地の価格が高く、土地面積が狭い都市部での多層階化が進んでいる。その市場でトップシェアを誇るのがパナホームだ。
3階以上の多層階住宅の住宅着工棟数が増えているのをご存じだろうか。
2016年度の全国の多層階住宅(3〜9階)の着工棟数は、4万3530棟となり、前年度の4万392棟から増加している。特に土地の価格が高く、土地面積が狭い都市部での多層階化が進んでおり、東名阪の8都府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府)で全体の82.5%を占めるという。東京都だけでも1万3332棟と、30.6%を占めている。
東京23区では、全着工棟数は前年比1.3%増となっているのに対して、3階建ては前年比3.1%増、4階および5階は7.5%増、6〜9階立ては7.4%増と、多層階の着工棟数が大きく伸びていることが分かる。
「多層階」という言葉を作ったのがパナホームだ。同社の専務執行役員で事業開発本部の平澤博士本部長は、「12年度から多層階事業を本格化しており、年々ビジネスが拡大している。都心部では、7坪〜10坪の土地に4階建てを建築するという例が出ている一方で、700坪、800坪という大規模案件もある。店舗と自宅を組み合わせた複合的な建物も増加している」と話す。
パナホームは17年1月に工業化住宅としては業界初の9階建てにまで対応した「Vieuno9(ビューノ9)」を発表。既に福岡と宇都宮の2カ所で着工が始まっているという。「4階建て以上では、パナホームはトップシェアを誇る」と平澤氏は胸を張る。
都内においても、3階建て以上を建設できる容積率150〜200%の場所は多い。特に墨田区では、4階建て以上を建てられるエリアが区内全域に広がっており、築35年以上の一戸建てが約9000棟あると見られているため、建て替えのターゲットとなる住宅が多いエリアである。パナホームはそこに多層階住宅を提案していこうというわけだ。
ちなみに、3階建ての着工棟数が一番多い区は大田区で、都内全体の11%を占める。次いで、世田谷区、足立区、江戸川区、葛飾区と続く。最も少ないのが千代田区、次いで、中央区、港区、台東区、渋谷区となる。
もう1つ、多層階住宅が注目される理由がある。
それは、15年1月の相続税改正に伴い、相続税の基礎控除額が引き下げられ、課税対象者が大幅に増加。二世帯住宅などに適用される「小規模宅地等の特例」への注目が高まっている。これも多層階住宅の着工棟数増加に追い風となっている。
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