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2018年、鉄道の営業力が試される杉山淳一の「週刊鉄道経済」2018年新春特別編(3/5 ページ)

「企業として、需要があるところに供給する。そういう当たり前のことを、鉄道事業者はやってこなかったのではないか」。つい先日、ある第三セクター鉄道の社長さんに聞いた言葉だ。小林一三イズムが落ち着き、人口が減少傾向にある中で、鉄道の営業努力が試される。2018年は、そんな時代になると思う。

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観光地行き特急も競争の時代

 通勤ライナーのきっかけとなった大手私鉄の有料特急列車は、登場時より営業面、マーケティング要素の強い商品だ。小田急の箱根、東武の日光など、路線建設自体も観光マーケティング要素の1つだった。小田急の箱根、京王の高尾山、西武の川越と秩父、東武の川越と日光、それぞれが観光客を奪い合う。

 関西の大手私鉄は京都・大阪・神戸の都市間輸送で競争していた。同じ区間の乗客を取り合うから、スピードと運賃の勝負。分かりやすい競争だ。

 関東大手私鉄は都心から放射状に伸びていくから、同じ区間の競合は少ない。そのかわり、余暇の輸送に対する競争が起きた。観光地向け特急列車によるサービスの競争だ。小田急、東武、西武は、特急列車に快適な車両、展望座席などで付加価値を高めていく。それは現在も続き、東武鉄道は「SL大樹」でリードするかと思えば、小田急は新型ロマンスカーを投入。西武鉄道もレッドアローで秩父方面を盛り上げる。

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小田急ロマンスカー70000形「GSE」。ビジネス向け需要を意識してWi-Fi環境などを備えた

 ここで東急電鉄はユニークな施策を打ち出した。伊豆観光に本腰を入れるけれども、子会社の伊豆急行までは東急の路線網がつながっていない。そこで、JR東日本の線路を借り、ミッシングリンクをつなぐための列車を作った。それが豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS」だ。

 これらの施策は沿線住民のためというより、地域外から訪れる観光客を取り込もうとしている。近年、関東では鉄道会社のTVCMを見かけるようになった。小田急の箱根関連は古くからTVCMを流しているけれども、西武鉄道のCMは女優の土屋太鳳さんが「ちちんぶいぶい」とダンスを踊る。関東の観光地競争が始まっている。かつての観光地の競争といえば、小田急と西武の箱根山戦争、東急と西武の伊豆戦争など、同じ地域を舞台にしていた。しかし現在は地域間の競争だ。むしろ同じ地域の会社は共闘した方がいい。

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