「価格破壊者」だった大塚家具がニトリに敗れた理由:どこで差がついた?(3/4 ページ)
創業当初の大塚家具が業界の「価格破壊者」だったことをご存じだろうか。その姿はかつてのニトリと重なる。同じようなビジネスモデルから出発したのにどうして両社の業績には差が出たのだろうか。
中間マーケットは存在するか?
これまで大塚家具が取り込んでいた顧客が低価格帯に流れ始め、業績は徐々に悪化していった。高級化路線を選んだ間違いについて窪田氏が解説する。
「もともとマスマーケットではない高級家具市場を上場企業が手掛けることが間違いのもとだった。大塚家具は仕入れの方法や店舗設計が高級向けになっている。大塚久美子社長は高級でなく、安売りでもない中間マーケットを狙う方針を出してるが、そもそもマーケットボリュームがとても小さい」
従来の路線を継続するかを巡り、大塚久美子社長は創業者である大塚勝久氏と対立。見事勝利し、15年から新体制をスタートさせた。「高級」というイメージの象徴だった会員制を廃止し、顧客層の拡大を狙っているが再建の道のりは険しいだろう。
ビジネスモデルが利益率の差を生む
ビジネスモデルが時代に合わなくなってきたことに加え、利益が出にくい事業構造であることも影響している。それは、大塚家具がニトリと比べてナショナルブランドを扱う比率が高いことに起因している。
まず、一般論として、小売店はナショナルブランドの商品を、卸業者を通して仕入れる。ナショナルブランドの商品はどこでも買えるので、価格競争に陥りやすい。全体として、利益率がどうしても低くなる。
一方、現在小売業で成功しているのは「製造小売業」と呼ばれる業態だ。自ら企画した商品(プライベートブランド)を自社工場で生産し、卸を通さずに自社店舗で販売する。自社工場を持たなくても、提携先の工場の品質や生産計画に深く関与し、ほとんどを自社で買い取るスタイルもある。自社で在庫を抱えるリスクはあるが、ナショナルブランドを扱うより利益率は高くなる。ニトリやユニクロを運営するファーストリティリングを筆頭に、小売業で成長しているのはこの形態をとっている。自社開発したオリジナル商品なので差別化が容易になるメリットもある。大手スーパーやコンビニチェーンでもプライベートブランドを積極的に開発しているのは、利益率を向上させるためだ。
ニトリは商品の約90%がプライベートブランドだ。一方の大塚家具は「オリジナル商品(プライベートブランド)の売り上げは、17年度における売上高の約6割を占める」(広報担当者)という。
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