顧客の若返りに成功 「和食さと」が好調を維持できるワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
店舗数で和食ファミリーレストラン最大手の「和食さと」。外食産業全体が縮小する中でも成長を続けている。最近ではジュースやお酒が飲み放題のセルフ式ドリンクバーが人気だが、商品開発や仕入れでどのような戦略をとっているのだろうか。
仕入れ専門部隊が活躍
和食さとでは、良いものをより安くを実現するための仕組みとして、仕入れ専門のMD(マーチャンダイジング)部を有している。日本国内のみならず海外も飛び回り、メーカー、卸を通さず直接取引する仕組みをすでに30年ほど前から構築している。つまり、外食でありながら商社機能を持っていて、中間マージンを省けるので価格を安くできるのだ。
また、産地と食材を共同開発しており、お店ですぐに使える形状に現地で加工してから仕入れている。このため、通常のレストランのオペレーションに比べて、食品ロスが軽減されている。
例えば、和食さとの看板メニューであるしゃぶしゃぶ食べ放題のさとしゃぶでは、海外で牛肉をブロックの状態にして輸入し、盛り付け皿のサイズに合わせて国内の工場でスライスしたものを店舗に配送する。お店の店員は工場から届いたスライス済みの牛肉を、盛り付け皿に移すだけで顧客に提供できる。
通常のオペレーションなら、仕入れた肉をお店で切ってお皿に並べるのだが、お皿のサイズに合わない肉は捨てることになる。熟練した店員がいなければ、肉を薄く切って並べるのも難しく、手間も掛かるところを簡便な作業に落とし込んでいるのだ。
豚肉の場合は、MD部の指導のもと、肉のブロックをお皿のサイズに合わせてスライスするところまでを海外で行ってから、輸入している。
天ぷらに使うエビも、海外で最終加工まで行い、冷凍して輸入することで、鮮度の高い商品を提供できるようにしている。従来の工程だと、一度解凍して殻を剥いて揚げたときにエビが曲がらないように筋を切って再冷凍する。
海外原産地の食材は7割で、エビも含めて調達先は東南アジアが最も多い。豚肉はメキシコと一部ヨーロッパ、牛肉はアメリカが主たる産地となっている。
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