顧客の若返りに成功 「和食さと」が好調を維持できるワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)
店舗数で和食ファミリーレストラン最大手の「和食さと」。外食産業全体が縮小する中でも成長を続けている。最近ではジュースやお酒が飲み放題のセルフ式ドリンクバーが人気だが、商品開発や仕入れでどのような戦略をとっているのだろうか。
すき焼きとしゃぶしゃぶの食べ放題が人気
和食さとでは高齢者に偏っていた和食ファンを、もっと若い人にも広げられるようにさまざまな取り組みを行っている。
そのうちの1つが、09年に導入したしゃぶしゃぶ、すき焼き食べ放題のさとしゃぶとさとすきだ。
120分で、2290円のスタンダードコースが基本。65歳以上のシニア、小学生、小学生未満にはそれぞれ割引があり、3歳以下は無料だ。牛肉、豚肉、野菜、鍋具材、ごはん、めん類が食べ放題となる。
2690円のプレミアムコースでは、一品料理が75種類以上も食べ放題となり、すしや天ぷら、季節の食材を使った限定メニューなども味わえるぜいたくなテーブルとなる。総合和食のファミリーレストランだからこそ可能なコースでもある。食後はデザートが1品選べる。
なお、さとしゃぶでは自社開発した昆布だしなど6種類のだしから2品が選べる。さらに、豚肉のみの食べ放題ならば、1990円のスタンダードコースが基本となるなど割安である。
牛肉は米国のアンガス牛でも上級グレードの製品が中心となっている。食べ放題といえども、品質に妥協はない。
販売数ではさとしゃぶとさとすきがディナーの約半数を占めており、和食さとの一番人気のメニューとなっている。プレミアムコースを注文する人が約85%となっており、好調な業績をけん引している。
3世代楽しめるメニューを目指す
さとしゃぶとさとすき導入の狙いは、3世代で楽しめるメニューづくりにある。特に多彩なメニューを提供するプレミアムコースは小さい子どもを持つ若いファミリーに人気があり、2回目には祖父母を連れて来店するケースも増えている。
さらに、17年に導入した飲み放題のさとカフェとさとバルは、さとしゃぶとさとすきの成功を受けて、新しいドリンクバーの楽しみ方を提案したものだ。
例えば、コーラをレモンサワーで割ってみたり、カシスリキュールにオレンジジュースを加えてカシスオレンジを作ってみたりと、ノンアルコールを含めて、さまざまなカクテルを自作できるのが最大の売りだ。
「ヨーロッパでは、食事をしながら気軽にお酒が飲めるバルがライフスタイルとして根付いており、さとバルもおいしい料理と一緒にドリンクを気軽に楽しむ空間や時間にしたいという思いがあります」(前出・瀬戸口氏)。
創業時のすし半から、和食の大衆化に力を注いできた和食さとにとっては、さとカフェとさとバルが浸透することで、目指してきた目標がようやく達成できそうだ。導入時の成功はスタートにすぎず、さらにこのサービスを磨いてリピートにつなげて欲しい。
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