コオロギを食べ続けて、どんなことが分かってきたのか:水曜インタビュー劇場(昆虫食劇場)(2/7 ページ)
コオロギやハチの幼虫などを食べる――。「虫を口の中に入れるなんて絶対に嫌」という人にはちょっと信じられないかもしれないが、昆虫を使っていかにおいしい料理をつくることができるのか、といったことを研究している人がいる。本人にインタビューした。
虫を触れないので、プロダクトをつくる
土肥: 高橋さんは昆虫を食材にできないかと考えていて、これまでさまざまな虫を使ってレシピを開発してきたんですよね。セミやバッタを見るのもダメ、触るのは絶対にダメという人にとっては、虫をわざわざ料理するなんて考えられないと思うんですよね。そもそもどういったきっかけで、昆虫を食材にしようと考えたのでしょうか?
高橋: 大学生のときに卒業制作に取り組まなければいけませんでした。当時の自分は「何かに取り組んで、1年後にアウトプットが想像できないものがいいなあ」と漠然と考えていました。そんなときに教授から「昆虫食はどうかな?」と言われたのですが、僕は虫が大の苦手。生きている虫で触れるのはアリだけなのですが、「研究してみてどんな結果が出るんだろう?」といった興味がわきました。
「昆虫食を研究する」と聞けば、食料問題に関心があって、ゲテモノが好きで、といった人を想像するかもしれませんが、僕はそうしたことに注目していなくて、「虫をどのようにしたらおいしくすることができるのだろう?」といった興味しかなかったんですよね。ちょっと調べたところ、昆虫食については分かっていないことがたくさんありました。食としても考えられるし、生物学としても考えられるし、アートとしても考えられる。いろんなアプローチができるので、それをどのようにして展開することができるのか、自分なりに模索できればなあと考えていました。
土肥: 入口は学問だったわけですが、研究を重ねていくうちに何かが見えてくるかもしれない。そうした考えだったようですが、ここでひとつ疑問があります。大の昆虫嫌いなのに、研究はどのように行ったのでしょうか。見るだけでなく、触ることも必要ですし、殺すことも必要になります。
高橋: 虫を触ることができませんので、手に触れなくても研究ができるようにプロダクトをつくりました。80センチほどの円筒をつくって、そのなかでコオロギを養殖できるようにしました。コオロギを養殖する際、卵のパックを使う人がいるのですが、それを使うとフンがたまりやすくなる。衛生的にあまりよくないので、円筒のなかに幾何学状のモノを入れて、そこでコオロギを育てました。そうすると、フンをしても下に落ちる、エサを食べ残しても下に落ちる。衛生的にとてもいいことが分かってきました。
とはいえ、簡単に育ってくれません。コオロギが一カ所に集まったり、汚染が始まったり。なぜそうしたことが起きるのか、原因がよく分からないんですよね。人間の場合、ここが嫌とか、あれが嫌とか言ってくれますが、虫は何も語ってくれません。嫌なことは態度で示してくるので、それを観察しなければいけません。とにかく観察して、何か異変があれば、対応するといった感じ。汚染などの問題については、幾何構造のモノをたくさん入れることで解決することができました。
関連記事
- なぜ「スーツみたいな作業着」をつくって、しかも売れているのか
スーツのような作業着「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」が売れている。製造しているのはアパレルメーカーでもなく、作業着メーカーでもない。水道工事などを行っている会社がつくったわけだが、なぜこのような商品を開発したのか。その狙いを聞いたところ……。 - なぜ伊藤忠は18年ぶりに「独身寮」を復活させたのか
伊藤忠が18年ぶりに「独身寮」を復活させた。業績低迷を受けて、2000年に社有の寮を売却したのに、なぜこのタイミングで建てたのか。建物は7階建てで、部屋は361室。国内最大級の寮のナカはどうなっているのかというと……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - キリンの月額制ビールは大人気なのに、なぜ再開できないのか
キリンビールが展開している「キリンホームタップ」が人気を集めている。専用サイトで申し込むと、月額6900円で自宅用のビールサーバーを借りられるわけだが、現在は受け付けを中止している。なぜこのような事態になったのか、担当者に聞いたところ……。 - 700台のカメラを設置して、スーパーの「トライアル」は何を分析しているのか
スーパーマーケットの「トライアル」が、近未来を感じさせられる店舗を構えた。店内には700台のカメラを設置して、人の動きや商品棚をウォッチしているという。最先端の技術を導入して、どんなことが分かってきたのか。 - 6畳弱の狭い物件に、住みたい人が殺到している理由
6畳弱の狭い物件が人気を集めていることをご存じだろうか。物件名は「QUQURI(ククリ)」。運営をしているピリタスの社長に、その理由を聞いたところ……。 - えっ、CDプレーヤーが売れている? エスキュービズムの戦略が面白い
ポータブルタイプのCDプレーヤー市場が面白いことになっている。市場が縮小していくなかで、新興メーカーのエスキュービズムが発売したところ、ある層を中心に売れているのだ。「CDプレーヤーなんてオワコンでしょ」と言われているなかで、どういった人たちが購入しているのか。 - 殻を捨てた「ザク」が、20万個以上売れている秘密
バンダイが発売しているガシャポン「ザク」が売れている。機動戦士ガンダムシリーズに登場するザクの頭部を再現したものだが、最大の特徴はサイズ。カプセルよりも大きいこのアイテムはどのように開発したのか。担当者に聞いた。 - なぜ地図で「浅草寺」を真ん中にしてはいけないのか
地図を作成している編集者に、2枚の地図を見せてもらった。1枚は浅草寺が真ん中に位置していて、もう1枚は浅草寺が北のほうにある。さて、実際に地図に掲載されているのは、どちらなのか。答えを聞いたところ、予想外の結果に!? - 売り場を減らしたのに、なぜ崎陽軒のシウマイはバカ売れしているのか
東京や新横浜で新幹線に乗ると、車内でビールを飲みながら「シウマイ」を食べているサラリーマンをよく目にする。崎陽軒の「シウマイ弁当」だ。駅弁市場は縮小しているのに、なぜシウマイ弁当は売れているのか。その理由を、同社の担当者に聞いたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.