コオロギを食べ続けて、どんなことが分かってきたのか:水曜インタビュー劇場(昆虫食劇場)(3/7 ページ)
コオロギやハチの幼虫などを食べる――。「虫を口の中に入れるなんて絶対に嫌」という人にはちょっと信じられないかもしれないが、昆虫を使っていかにおいしい料理をつくることができるのか、といったことを研究している人がいる。本人にインタビューした。
煮たり、焼いたりしても「おいしくない」
土肥: 養殖するだけでもさまざまな苦労があったようですが、その後は円筒のなかで育ったコオロギを料理したのでしょうか?
高橋: はい。どんな味がするのかよく分からなかったので、焼いたり、煮たりしたのですが、全くおいしくなかった(涙)。ものすごく臭くて、おいしくない。臭みを取るために、粉末にしたり、ペースト状にしたりしたのですが、「昆虫食を普及させることはできないのではないか」と不安を感じるほど、おいしくなかったんです。
でもちょっと考えれば、マズくて当然なんですよね。例えば、牛や豚が出てきて、「さあどうぞ、好きに料理してください」と言われても、素人は上手に調理できませんよね。おいしく食べることができるような解体方法があるはずですし、正しい血の抜き方だってあるはずですし、オススメの保存方法だってあるはず。牛や豚をおいしく食べるために、人間はこれまでさまざまな研究をしてきました。いや、いまも研究が続いている。生き物を食べるということはそうした基礎が大切なのに、当時の自分はそうした知識が全くといっていいほどなかったので、当然おいしく食べることなんてできません。
というわけで、さまざまな失敗を重ねました。どうしても臭みを取りたいので、天日干しをやってみることに。魚を太陽の光にあてるとうまみが増すということだったので、昆虫でも同じようなことをしました。でも、おいしくない。なぜか。魚の場合、内臓を取り除いて、塩水につける作業をしているんですよね。そんなことも知らずに虫をそのままの状態で干したところ、内臓が腐ってしまいました。
このほかにも臭いを消すために、アルコールに漬けたり、味噌に漬けたり、牛乳に漬けたり、さまざまな実験を繰り返しました。失敗に失敗を重ねて、実験結果からいまでも技術的に使えるのは1%ほど。研究を始めた当初は「昆虫って気持ち悪いよね」といったことしか言えなかったのですが、失敗を重ねていくうちに「自分が食べれるようになるために、こういう手法があるかもしれない」といった具合に、思考のレベルが少しずつ上がってきました。
土肥: ふむふむ。
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