雑誌発行に舞台公演も!? 焼酎業界の「名プロデューサー」走る:すべては焼酎ブーム再来のため(4/4 ページ)
焼酎業界で多くの名酒を生んだ「名プロデューサー」である卸会社の社長が焼酎への逆風の中でブーム復活を狙う。地道な商品開発に加え雑誌発行、舞台の制作まで挑戦。
「手探りで焼酎文化立て直す」
実は歌舞伎などの観劇が趣味という中村さん。ストーリーの原案を脚本家に説明して作品にまとめてもらい、出来上がった物にさらに修正を加えるという入れ込みよう。劇中で歌われるオリジナル曲の作詞も手掛けた。
ただ、なぜ焼酎PRの方法に芝居を選んだのか。きっかけとなったのは、福岡の老舗めんたいこメーカー「ふくや」(福岡市博多区)の創業者をモデルにした舞台「めんたいぴりり」。元は地元の民放が放送した人気テレビドラマで、はまった中村さんは3回もこの舞台を見に行ったという。
「生の声は必ず伝わる」と確信した中村さん。ちょうど17年にこの磯ぎよしの経営者、里和直さんと知り合い料理の腕にほれ込んでいた。里さんが挫折を経て福岡の人気居酒屋となったストーリーを通じ、この店の魅力、ひいてはそこで飲まれる焼酎のすばらしさを消費者に伝えられると考えた。
「うちではちょうど『挽回』(熊本・深野酒造)という焼酎も扱っている。磯ぎよしのストーリーのように、焼酎もまさに挽回してほしいという思いを込めた」(中村さん)。劇中では、主人公が失意の中で焼酎の温かい「だし割り」を飲み、元気を取り戻すシーンが出てくるなど商品アピールも忘れない。
自身の半生を舞台化するよう口説かれた里さんをして「まるでガキ大将がそのまま大人になったような人。勢いがスゴイ」と言わしめる中村さん。「焼酎は今安売り傾向にあるが、私にとってはあくまで『作品』。その背景にあるストーリーを消費者に伝えたい」と熱く語る。
挽回博多メシは8月23日、ぽんプラザホール(福岡市博多区)で開演する。「焼酎は多様性を持った商品。単に小売りに流すだけでなく、手探りでこの食文化を立て直す。それが私に課されたテーマ」(中村さん)。焼酎復活を懸けた中村さんの舞台の幕が今、上がる。
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