もうコンビニは若者のものではない:市場が激変(3/3 ページ)
コンビニエンスストアの来店客に変化が生じている。セブン-イレブンの統計によると、50歳以上は1989年に1割に満たなかったが、2017年には約4割を占める。「コンビニは若者のもの」から「シニアのもの」へと移り変わっているようだ。
コンビニのサービス面の充実と社会インフラ化
さらに、コンビニでは生活上のサービスの取扱いが増えている。公共料金や税金の支払い、住民票発行など行政関連サービスの代行、銀行ATMサービス、宅配便やクリーニングの受け取りや預かり、無料Wi-Fiサービスなどにも対応し、消費者にとって暮らしの拠点の1つとなりつつある。
特に高齢単身者にとって、身近に暮らしの拠点があることは安心だ。また、コミュニケーションの場としての価値もあるだろう。さらに最近では、コンビニは社会インフラとしての価値も高まっているようだ。
セブン&アイ・ホールディングスの「CSRレポート2017」を見ると、「高齢化、人口減少時代の社会インフラの提供」を重点課題の1つに挙げている。人口減少により生活拠点の空洞化が進んでおり、2030年には徒歩圏内に生鮮食品店がない高齢単身世帯数が現在の約2倍になるそうだ。そこで同社では、前述の買い物支援や食事宅配サービスなどに加えて、自治体との連携協定を進めている。
例えば、店舗や宅配サービス提供時に高齢者の異変などを察知した際は自治体と連携して対応すること、また、近年、日本では深刻な災害が起きているが、災害時の迅速な物資支援、帰宅困難者への水道水やトイレ、周辺情報の支援などの協定が進められている。なお、同業他社でも同様の取組みが見られる。
人口構造やニーズ変化を脅威ではなく機会に
コンビニ各社ではサービス面の強化とあわせて、モノでも付加価値を高める取組みが見られる。小分けの食品や惣菜のさらなる充実に加えて、生鮮食品の取扱いや独自のプライベートブランド商品の拡充、淹れたてコーヒーの販売などもある。
また、正月にはお節料理が注文でき、節分には恵方巻きが、春にはイチゴのスイーツが売られ、もはや旬さえも楽しむことができる。高齢単身者だけでなく、主婦や家族世帯にとっても魅力的だ。これら全ての取組みが、伸び続ける売上高の背景にあるのだろう。
少子高齢化による人口減少が脅威となる業界は少なくない。しかし、人口構造や世帯構造、消費者のニーズの変化は事業成長の機会にも成り得る。変化をどう捉えるかが成功の鍵となる。
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