もうコンビニは若者のものではない:市場が激変(2/3 ページ)
コンビニエンスストアの来店客に変化が生じている。セブン-イレブンの統計によると、50歳以上は1989年に1割に満たなかったが、2017年には約4割を占める。「コンビニは若者のもの」から「シニアのもの」へと移り変わっているようだ。
コンビニの注目は若者からシニアへ
セブン-イレブンの来店客が高齢化している背景の1つには、企業側が戦略的に若者からシニアへターゲット層を変えた可能性があるのではないか。
日本では高齢化に加えて、未婚化や核家族化の進行により、今後、高齢単身世帯が増えていく(※2)。現在、単身世帯は総世帯の3割超だが、2040年には約4割となる。また、単身世帯のうち、60歳以上は、現在は約4割だが、2040年には半数を超える。
コンビニは、もともと高齢単身世帯の生活と調和している。コンビニで売られている食品や惣菜は、スーパーと比べて小分けのものが多く、単身者が必要な時に必要な量だけを買いやすい作りだ。また、店舗が小規模であるため、住宅街やマンションの1階などにも多い。遠方まで出歩かずに近所で用事を済ますことができる上、店内もさほど歩かずに済む。
一方で、かつてコンビニの主力客であった若者は1990年ごろと比べて1人暮らしが減り(※3)、コンビニで食品などを買う必要性が低下している。また、少子化の影響で単身世帯に占める若者の割合も減り、90年では35歳未満が約半数だったが、2015年では3割弱となっている。
さらに、価値観も変容している。景気低迷の中で生まれ育った今の若者は価格感度が高く、デジタルネイティブであるため情報感度も高い。コンビニよりもディスカウントストアや百円ショップ、格安ネット通販などを利用して、モノをできるだけ安く買う術に長けている。
若い世代ほどコンビニ離れが進む一方、1990年代にコンビニ生活に慣れ親しんだ若者が歳を重ねることで、来店客の年齢分布が高齢化した影響もあるだろう。しかし、コンビニ側が、人口が減りニーズが弱まる若者よりも、増加傾向にありニーズの強い高齢(単身)者へと、ターゲットを積極的に移した可能性もあるのではないか。
例えば、近年、コンビニ各社では、高齢者をはじめ食事や買い物に不便さを感じる消費者に向けて、食事配達サービスや買い物支援サービスを提供するようになっている。このような代行サービスは増加傾向にある共働き世帯でも強いニーズがあるだろうが、業界2位のローソンでは、高齢者というよりも、共働き世帯や子育て世帯を主力ターゲットとしているようだ(※4)。
※2 久我尚子「増え行く単身世帯と消費市場への影響(1)・(2)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/5/9、8/21)
※3 久我尚子「ひとり暮らしの若者の家電事情」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/4/16)
※4 ローソンの提供するネットスーパー「ローソンフレッシュ」ホームページより
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