回転すしの厨房はどうなっている? くら寿司で働く若きリーダーに見せてもらった:徹底的な効率化を推進(3/5 ページ)
大手回転すしチェーンは安くてうまいすしを迅速に提供することで成長を続けてきたが、そのビジネスを支える厨房はどのようになっているのだろうか。くら寿司の新店オープンを次々と手掛ける若きリーダーに話を聞いた。
業務効率化で変わる従業員の役割
調理マシンや注文システムなどのインフラが整っていることで、どの店舗でも同じ品質のすしを同じスピードで提供できるようになる。すると、各店舗の従業員に求められるのは、厨房の清潔度を保ちながら、これらの調理マシンをマニュアル通り使いこなし、お客により早くすしを提供することになる。
現在、越谷下間久里店には全国各地の新店オープンを担う11人の「オープニングスタッフ」、店舗運営を担当する4人の社員(店長含む)、約90人の従業員(主婦などのパート)が在籍している。1営業日で、通算して40〜50人のスタッフが働いているという。
新店の立ち上げと、運営を軌道に乗せるまでにはどのような苦労があるのだろうか。10人のオープニングスタッフを率いるリーダーの田村祐也氏(27歳)に話を聞いた。
入社5年で複数店舗の店長を経験
田村氏は2013年4月に入社した。東京都足立区の店舗などを経験した後、鳩ヶ谷店(埼玉県川口市)の店長となった。入社4年後には新規オープンする店舗の新店店長を経験し、現在のオープニングリーダーに抜てきされた。
オープニングリーダーの仕事は、オープン前後の約5週間で、10人のオープニングスタッフとともに、従業員を集中的にトレーニングし、安定して運営できるようにすることだ。運営が軌道に乗ってからは店長に業務を引き継ぐ。
厨房で行う作業の1つ1つは基本的に難しくはないが、従業員が決められた通り動けるようにトレーニングするのは大変なことだという。例えば、すしをつくる際、田村氏は両手で2個のシャリをつかんで皿に乗せ、2個のネタも同様に両手でシャリに乗せているが、店舗で働き始めたばかりの従業員は片手でシャリを1つずつ皿に乗せることがある。田村氏は2回の動作で調理を完成させるが、慣れていないと必要な動作は4回になってしまい、迅速にすしをお客に提供できない。
こういった作業を働き始めた従業員に徹底させられずに「どうしてうまくいかないんだろう」と落ち込む社員もいる。そこで、田村氏は店舗の事務所などで励ましの声をかける。「新店オープンのために外部の業者と連絡を取り合ったり、店舗のレイアウトに応じて厨房の動線を調整したりといろいろ大変なことはありますが、社員に対する“精神的なケア”が重要です」と語る。
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