アイコス用たばこはどう作っている? スイスの工場と研究所に行ってきた:新型デバイス登場でシェア拡大なるか(3/6 ページ)
新型が発売された「アイコス」。そのヒートスティック工場と、研究・開発施設の内部を取材した。PMIの責任者に、日本・米国市場での展望についても聞いた。
専用の器具で加工
成型されたシートはその後、専用の器具によって加工され、カーテンのようにひだのある波型になる。PMIの担当者は「加熱した際に出るエアロゾル(蒸気)に香りの強さや吸い応えを持たせ、オリジナルの風味を担保するためだ」と波型に加工する理由を説明する。
波型に加工されたシートは、機械によって丸められ、長さ12ミリ(2本分相当)程度の円筒形に加工される。だが、この円筒は、まだ加熱しても吸うことはできない。
密度を下げることが重要
そこで次の工程では、円筒の両端に、2種類の特殊な包み紙を取り付けて内部に空洞を作り出し、吸った際に最適な空気の通りを実現する。包み紙の1種はトウモロコシ由来の繊維を利用しているため、加熱した場合でも安全という。
「ヒートスティック内部の密度が高すぎると、加熱した際にエアロゾルが多量に発生し、特有の味わいを生み出せなくなる。そのため、内部の密度を下げることが品質を保つ上で重要だ」(PMIの担当者)
紙巻きたばこと同様、吸い口にはフィルターも取り付ける。フィルターは、エアロゾルをろ過して味をまろやかにする働きを果たす。
1分間に8000本が作られる
こうして、加熱して吸うとおいしく味わえるよう調整されたヒートスティックは、中央で裁断され、1本分の長さに整えられる。1分間に製造される量は8000本に上るという。
工場には、地上約2メートルの位置にレールが設置されており、出来上がったヒートスティックはここを通り、箱詰め用ロボットの元に送られる。ロボットは、ヒートスティック10本ごとに銀紙を被せ、2セット(20本)ごとにまとめて1ケースに詰め、ラッピングし、大量に集荷した上で出荷用ケースに納入する――といった作業を全て自動で担う。
普段、コンビニなどで手に入るヒートスティックは、こんな経緯で製造され、世に出されるのだ。今回は秘密保持のため取材できなかったが、「Marlboro(マールボロ)」など、PMIが展開する紙巻きたばこもこの工場で製造されている。
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