ゼロから50人に急増、なぜグロービスは異質のエンジニア採用に成功しているのか?:生まれ変わる組織(2/6 ページ)
ビジネススクールとして著名なグロービスが大変革を起こしている。2016年に初めてリードエンジニアを採用し、ビジネスおよび社内のデジタル化に力を入れているのだ。関係者を取材した。
社会人向け教育でトップの会社でできるチャレンジに魅力を感じた
16年9月にグロービスのエンジニア第1号として入社した末永昌也さんは、新卒で人材系ベンチャーを経験した後、教育関連のスタートアップを起業してCTO(最高技術責任者)を務めていた。
その翌年に3人目のエンジニアとして入社し、リードエンジニアを務める田邉裕貴さんも、新卒入社したヤフーの同僚とVR(仮想現実)関連のスタートアップを起業した経験がある。2人とも小さな新興企業でできることの限界を感じていたところに、教育という領域で圧倒的なブランド力と市場シェアを持つグロービスでできるチャレンジに可能性を感じて転身を決めたそうだ。
田邉さんは、エンジニア中心の組織を作っていく過程に主体的に参加していけそうなことにも興味をひかれたという。
「入社前、22年までにエンジニアが100人超の組織にするという事業計画を聞いたんです。100人の中の3人目になれば面白いことができそうだと思いました。3人でやっていたスタートアップでは、事業がうまくいかないと組織を成長させていくのが難しいことを実感していましたし、逆に従業員が1万人くらいいるヤフーでは、社員から働きかけて組織を変化させるのはなかなか難しいことでした。100人くらいの規模でスケールしていくチームを作っていくのは、すごく楽しそうだと感じたんです」(田邉さん)
2人が所属するグロービス・デジタル・プラットフォーム事業部は、同社で対応が遅れていたデジタル化を進めるために16年に組織された。これまでにリリースしたサービスとして以下の2つがある。
- グロービス学び放題(定額制の動画学習サービス。16年にサービス開始)
- グロービス・ラーニング・プラットフォーム(法人向けの学習管理システム。18年9月に一部サービスを開始)
これまでグロービスでは、業務やサービスに必要なシステムは外部ベンダーに開発を委託してきた。そのため社内にITエンジニアやデザイナーがおらず、事業部発足時のメンバーは企画や営業、サービスの運営を担当する15人程度だった。「グロービス学び放題」は、外部ASPを使って法人向け限定でスタートしたが、サービスを拡充していくには、自社内でサービスを開発できる人材が必要となる。自らの提案で事業部を立ち上げた井上陽介マネジメント・ディレクターは、「22年までに100人超のエンジニア組織を作る」という事業計画を立てて積極的に採用活動を行ってきた。その結果、現在80人ほどになった事業部の半数以上がITエンジニア、デザイナー、データサイエンティストという、同社では異色の集団が生まれたのだ。
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