ゼロから50人に急増、なぜグロービスは異質のエンジニア採用に成功しているのか?:生まれ変わる組織(3/6 ページ)
ビジネススクールとして著名なグロービスが大変革を起こしている。2016年に初めてリードエンジニアを採用し、ビジネスおよび社内のデジタル化に力を入れているのだ。関係者を取材した。
大きい会社ではなくベンチャーに入ったような感覚で仕事ができている
エンジニア第1号の末永さんは、最初は何の業務も与えられず、ただ「好きにチームを作っていいよ」と言われて戸惑ったという。そんな中、まず手掛けることになったのは、法人限定の「グロービス学び放題」を個人にも提供できるようにシステムを作り直すことだった。入社した時にはすでに外部ベンダーによる開発が始まろうとしていたが、その様子を見た末永さんは「スピードが遅すぎる」と感じた。
「これで本当に戦っていけるのかということを散々議論した結果、もともと依頼していた会社への発注を止めて、新しいチームで一気に作り上げることにしました」(末永さん)
新しいチームといっても採用が間に合わないので、最初は知人のオフショア開発の会社を通じてベトナムに開発チームを作ることを考えた。これについて、末永さんは事業部長である井上さんに10行程度の相談メールを送ったところ、返ってきたのは「やりましょう」の一言。心意気を感じ、そこから物事がどんどん進み始めたという。
入社したばかりの末永さんらにかなりの裁量が与えられ、任されてきたことが分かるエピソードだ。それだけでなく、オフィスのリニューアルに当たっては壁一面をすべてホワイトボードにしたり、執務スペースの真ん中にカジュアルな打ち合わせや休憩に使えるソファを設置したりと、エンジニアたちの意見を取り入れて彼らが働きやすい環境を作った。
さらに、コアタイムが最低限に抑えられたフレックスタイム、リモートワーク、副業の許可、採用のための会食支援、社内交流のためのシャッフルランチなど、IT系のスタートアップ企業ではスタンダードになりつつある制度を整えたほか、人事制度には従来のプロフェッショナル職とエキスパート職の他にテクノロジー職というキャリアコースを加え、エンジニアやデザイナーなどの成果を評価しやすい仕組みも整備した。末永さんいわく、「大きい会社に入ったというよりも、ベンチャーに入ったような感覚で仕事ができている」という。
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