すし屋「久兵衛」VS. ホテルオークラ 泥仕合の背後に“下剋上”への脅えと焦り:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/7 ページ)
高級すし店「銀座 久兵衛」がホテルオークラともめている。背景にあるのは高級すし店とホテル業界の競争激化による地位低下だ。転落しようとしている両者が抱く焦りとは。
パレスホテル東京の成功に倣う?
ホテルオークラ東京は移転後の新しい山里を、どうしようとしているのか。
イメージとしてはパレスホテル東京のレストラン街にある、和食「和田倉」をベンチマークしているのではないかと考えられる。同ホテルは、12年5月、老舗ホテル「パレスホテル」を建て替えて新たにオープンしている。
和田倉の入口には「和田倉」の看板しか掲げられていないが、中に入るとすしカウンターには鮨かねさか、天ぷらカウンターには「巽」、鉄板焼には「濠」の看板が出ている。つまり、和田倉の「店内店」が3つあり、鮨かねさかのみが外部からきたテナントとなる。だから、知らない人はパレスホテル東京に行っても鮨かねさかの看板が見つけられず、店の場所がどこにあるのか分からないのだ。
例えば、そういう条件をホテルオークラ東京から突きつけられれば、久兵衛側としては看板を傷つけられたとなるのではないか。だから移転を嫌がった。
新しい山里は、天ぷら専門店から総合和食の直営店としてリニューアルし、従来になかったすしや割烹のカウンターを新たに設置する計画である。すしを外部の業者に任せたとしても、店の外の看板は「山里」としか掲げず、店に入ったらすし屋の看板があるという形態を取ろうとしているのだろう。
久兵衛は別棟のアーケード街に店舗スペースが充当されたが、飲食のメインエリアから追い出されたと受け取ったわけだ。もめているうちに、やむなくホテルオークラ東京の事情を知り、久兵衛から独立した店に依頼せざるを得なくなったのではないか。
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