2015年7月27日以前の記事
検索
ニュース

ゴーン氏逮捕は「ホリエモン、村上ファンドの時よりひどい」 郷原信郎弁護士が指摘錯綜する日産事件報道の行方(2/3 ページ)

ゴーン・日産前会長の逮捕について郷原信郎弁護士が問題点を指摘。逮捕するほどの案件では無かった可能性や、解明へ公正中立な第三者委員会の必要性を説く。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

「日本版司法取引」は適切だったか

――本件は18年に施行された「日本版司法取引」の2例目になるとされ、注目されています。「企業のトップの不正を明らかにする代わりに実行役の部下は守る」という形を取っており、法曹界では今後のモデルケースになるという見方もあるようですが、どう評価しますか。

郷原: ゴーン前会長への報酬の支払いの事実について、財務担当者といった一部の人間しか知らず、その人が情報提供しているのなら(司法取引として)形にはなる。ただ、会社全体が知っていたというのなら成立しない。

photo
検察・警察の捜査の在り方を長年批判してきた郷原信郎弁護士

――日本版司法取引では、情報提供者は単に「自分の罪を認める」だけでなく、捜査機関に「新たな事実の提供」などで協力する代わりに刑事処罰を軽減してもらうことになっています。本件はどう見ますか。

郷原: 一部報道であったように、仮にゴーン前会長側にストック・アプリシエーション権(SAR、株価に連動した報酬を得る権利で日産も導入)に基づいて支払われた役員報酬が記載されていなかったといったケースだったのならば、報酬が払われた事実自体は(客観的に)間違いないことになる。

 その場合、有価証券報告書に記載するかしないかは、あくまで(情報提供者とゴーン前会長側の)見解の相違の問題にあたる。この「見解の相違」(を検察に告げた)だけでは捜査協力にならないと思う。ただ、(ゴーン前会長側が)情報提供者にプレッシャーを浴びせて無理やり記載させなかったといった事実があり、その事実をもって司法取引したのなら分からないでもないが……。

 (企業トップが)本当に許しがたい暴君で犯罪を犯していて、それを下の人間が告発するというケースなら分かるが、そんなことは(一般的に)企業の中ではあまりないのではないか。そんなきれいな形の司法取引はあり得るのかな、と思ってしまう。末端の人間が検察を訪れても、その人の持ち込んだ話が本当かどうかは分からない。それで企業の上層部への疑いを検察が持つというのは無理がある。せいぜい使えるのは法人への処罰を軽減する場合だが、発生するのはあくまで特殊な事例だと思う。(司法取引は)幻想を抱かれている面があるのではないか。

 内部告発にしても、本当に世の中に迷惑を掛けるような不正の核心を知っている人が告発する、というケースはあまり考えにくい気がする。内部通報制度が実際に機能しているのは、セクハラやパワハラといったケースだと思う。

――本事件の進捗を見極めるには今後、どういった点を注視すべきですか

郷原: まず、検察の今後の動きがポイントになる。この案件は果たして起訴に値するのか。(金商法の)両罰規定で法人も罪を問われる可能性はある。結局、せいぜいゴーン前会長、グレッグ・ケリー前代表取締役、西川広人社長、そして法人としての日産への罰金くらいになるのではないかと見ている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る