罰金を科された「TikTok」は、第2のファーウェイになるのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
世界的に人気の動画共有アプリ「TikTok」の運営企業が米政府から罰金を科された。ファーウェイに続き、また中国企業が米国の目の敵にされている、と不穏な見方が浮上している。なぜTikTokに対する警戒感が広がりつつあるのか。この騒動はどこへ向かうのか。
若者が夢中だが…… 悪用で逮捕者も
そもそもこのTikTokとは一体どういうアプリなのか。
TikTokは「ショートムービーアプリ」と分類されている。ユーザーは、例えば口パクで曲を歌うなど15秒間で動画を撮影する。次にデータベースにある曲や効果音、サウンドバイトなどを選択して組み合わせる。そして動画をアップし、別のユーザーがその動画に返信する形でまたビデオをアップする。すると画面が分割されてビデオが同時に表示されるため、チェーンのように動画が連なっていくことになる。自前のサウンドをアップしたり、他人が作ったオリジナル曲に口パクを合わせた動画を投稿したりもできるし、フィルターで動画を加工したり、スタンプを使ったりもできる。
このアプリは10代を中心に、どんどん人気が高まっており、最近では世界で最もダウンロードされたアプリとしてメディアをにぎわせている。
今では世界150カ国で利用されているTikTokだが、日本では17年に配信をスタートし、歌手のPerfumeや倖田來未などが参入したことで話題になった。18年には、日経MJヒット商品番付でも「横綱」に選ばれている。まさに注目のアプリである。
こうした新しいアイデアが世界各地から出現し、スマホなどで盛り上がるのは素晴らしいことだ。TikTokも若者が中心となって純粋に楽しむことを目的に使われており、これによって刺激を受けた若者たちが国境を超えて感性などを磨き、世界の人たちとコミュニケーションを交わしていくのは歓迎すべきことだろう。
だが、残念ながら、子供たちが夢中になっているこうしたサービスを悪用しようとする輩は必ずいる。テクノロジーの進化で便利さや楽しみが提供され、人やカネが集まると、そこには必ずリスクが生まれるものだ。
事実、日本では早くも逮捕者が出ている。神奈川県伊勢原市立小学校教諭(31)が、児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで、2月6日に奈良県で逮捕された。18年12月にTikTokで知り合った12歳の女児に上半身裸の画像を送らせた容疑だという。もちろんTikTokが悪いわけではないが、こうした新しいプラットフォームにつけ込む犯罪者は必ず出てくる。
もちろんTikTokのようなアプリの急激な台頭は、秩序の乱れや犯罪につながる可能性があるとして国家をも警戒させる。それが今回の、米政府による多額の罰金措置につながっている。
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