罰金を科された「TikTok」は、第2のファーウェイになるのか:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
世界的に人気の動画共有アプリ「TikTok」の運営企業が米政府から罰金を科された。ファーウェイに続き、また中国企業が米国の目の敵にされている、と不穏な見方が浮上している。なぜTikTokに対する警戒感が広がりつつあるのか。この騒動はどこへ向かうのか。
TikTok人気は安全保障問題? 広がる警戒感
それだけではない。今、犯罪者だけでなく、国家までもその人気を利用しようとしているのではないかとの疑念すら出ている。
最近、米ワシントンにある有名シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所がTikTokの台頭に苦言を呈するレポートを発表した。同研究所はレポートで、「TikTokのようなアプリの影響範囲を無視することは致命的なミスとなり得る」と指摘している。
そしてこう警告している。「中国のソーシャルメディアが海外で浸透することは、事実上の安全保障問題となる。ソーシャルアプリは、ユーザーのデータを大量に収集する。そうした情報が中国に送信されると、政府によって容易にアクセスされてしまう。例えば、中国政府の監視ソフトが欧米人の顔を認識する情報を与えてしまうし、欧米の軍などの活動についてのインテリジェンス(情報)が抽出されてしまう。米国と欧州の当局は、こうしたリスクをまだ十分に認識していないのである」
米軍や政府関係者なども遊びで利用しているこのアプリについて、警戒心を隠さないのは当然かもしれない。ちなみにTikTokの利用者が非常に多い東南アジアでも警戒する動きはある。例えばマレーシア軍は、TikTokを使用禁止にしている。
こうした見解に、中国共産党機関紙「国民日報」系の環球時報(英語版)は「ファーウェイの次は、TikTokが米国の安全保障を脅かす存在として最新のターゲットになっている。世界で人気が高まるにつれ、TikTokが欧米の国家安全保障にとって『ファーウェイと同等レベルの問題』になる可能性があるという」と反論している。
そして、「いつから米国の安全保障に対する感覚はそんなに脆くなったのか」と指摘し、さらにこう続ける。「世界的に人気を得ている全ての中国のハイテクのイノベーションや製品が、安全保障の脅威であると見られているようだ。一部の米国のエリートたちや政治家には、TikTokやファーウェイのように人気が出れば出るほど、それに伴ってどんどん脅威が高まるらしい。彼らは、米国のテクノロジー分野における覇権に対抗している」
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