罰金を科された「TikTok」は、第2のファーウェイになるのか:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
世界的に人気の動画共有アプリ「TikTok」の運営企業が米政府から罰金を科された。ファーウェイに続き、また中国企業が米国の目の敵にされている、と不穏な見方が浮上している。なぜTikTokに対する警戒感が広がりつつあるのか。この騒動はどこへ向かうのか。
政府に協力義務「国家情報法」の懸念
確かに、この話は構図としてはファーウェイの話につながるところがある。というのも、中国の影響を懸念している欧米の専門家などは、17年に中国政府が制定した「国家情報法」が頭にあるからだ。
国家情報法は、第7条で、中国国民は国家のインテリジェンス活動(諜報活動)を支援する義務があるとし、第14条では、諜報活動を行う機関は、関係機関や組織(企業など)、国民に対して、必要なサポートや支援、協力を要求することが許される、と規定している。欧米の政府関係者や専門家らは、中国がこの法律を根拠に中国企業と国民に対して、インテリジェンス活動の協力を義務付けていると指摘している。もちろんここで言う「個人」とは企業を経営・運営したりする中国人も含まれる。
とはいえ、筆者が先日取材した元米政府関係者は、「中国はこの国家情報法よりも前からずっとそうした活動はしてきているし、中国の市民や企業などはこれまでも協力を拒否することが許されなかった、というのが現実ですね」と話していた。
例えば15年には、国家安全法という法律が中国で制定されている。この法律では、国家安全当局者に協力し、その命令・指示に従うことを中国の国民に義務付けている。つまり、ホテルなどの産業にも無制限の協力を命じている。
確かに、米政府の言い分を鑑みれば、中国企業であるバイトダンスも、政府からの要請によってユーザー情報を提供しなければならなくなる。また同社を創業し、経営しているのは中国人である張一鳴だ。
TikTokはこうした話をどうみているのか。ピーターソン国際経済研究所の記事が掲載されてから20日ほどして、バイトダンスが同研究所に記事に反論するメッセージを送ってきたという。バイトダンスは、「TikTokは中華人民共和国では運営されていないし、中国政府はTikTokのユーザーのデータにアクセスはできない」と主張している。だが政府が直接アクセスできなくとも、同社が北京市に本社を構える中国企業である以上、中国の法律には従う義務があるはずだ。
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