「サイバー脅威を分かってない」弱点だらけの日本企業に寄せられる、大きな期待:世界を読み解くニュース・サロン(3/6 ページ)
「脅威インテリジェンス」というサイバーセキュリティ対策が注目されている。サイバー大国・イスラエルの脅威インテリジェンス企業によると、「日本企業は本当の脅威を分かっていない」。同社が見る、日本企業の弱点と期待とは?
イスラエルが「サイバー大国」になった理由
冒頭の情報は、このKELAが察知した攻撃だった。そこで登場した「Panda」とは、16年リオデジャネイロ夏季オリンピックで最初に見つかったマルウェアの亜種で、感染するとクレジットカードなどの顧客データや個人情報などが盗まれてしまうものだった。既に述べた通り、筆者の手元にある標的となった日本企業のリストには、大手銀行や大手クレジットカード会社、大手オンラインショッピング企業、大手小売企業がずらりと並んでいる。ただ、こうした企業にどれほどの被害が出たのかは公表されていないために、不明である。
イスラエルは以前より、サイバー大国として知られている。その背景には、イスラエル軍で優秀なサイバー人材を育てていることがある。拙著『ゼロデイ』でも、イスラエルのサイバー史や現状はかなり詳しく取り上げているが、イスラエルでは徴兵制で18歳の国民をスクリーニングし、優秀な人材を拾い、育てていく。そしてよりすぐりの才能がイスラエル軍のサイバー部隊である「8200部隊」などに入って鍛えられ、その人材が兵役を終えると、民間企業などに入り、イスラエルを支えていく、という基本的なエコシステムが存在する。それがイスラエル企業に優秀なサイバー人材が豊富なゆえんだ。
KELAは、16年リオ夏季オリンピックで、地元警察のサイバー攻撃監視を担ったという。創業者は「8200部隊」出身で、幹部の多くが以前、イスラエル軍で情報活動に従事していた経験を持つ。この「8200部隊」は、09年に米NSA(米国家安全保障局)とCIA(米中央情報局)が中心となって、イランのナタンズ核燃料施設にサイバー攻撃を仕掛けて遠心分離機を爆発させた「スタックスネット」と呼ばれるサイバー攻撃にも協力したと言われている組織であり、世界的にも名の知れた凄腕サイバー部隊である。
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