悪質手口から有休を守れ! あなたにもできる「ブラック企業との戦い方」:働き方改革関連法施行後の「自己防衛術」(3/5 ページ)
働き方改革関連法で注目されるのが年5日の「有給休暇の取得義務」――。取得させないように動く経営者からいかにして自分を守るのか?
“寝た子を起こすな”戦術
1の「年5日取得できることを従業員に周知しない」は、アルバイトが多い飲食・小売業界では、“寝た子を起こすな”戦術と呼ばれている。法律で決められた労働者の権利をあえて教えずに、バイトが「有休を取りたいんですが」と言ってくるまで、だんまりを決め込む。週2日の短時間バイトであっても、年間73日以上働く見込みがあれば、バイト開始半年後に3日の有休が発生する。だが、このことを知らないバイトも多いから、教えない経営者もいる。
同じように年5日の取得義務をあえて教えない経営者もいるだろう。前出のディップの調査では、有休取得義務化を聞いたことがある人が45%。聞いたことがない人が半数以上の55%。聞いたことがあっても内容を知らない人が14%。つまり7割の人がよく知らないということだ。これは何を意味するか。会社は法律改正事項を従業員に周知し、就業規則を改定して労働基準監督署に届け出る必要があるのに、従業員に周知していないということだ。
2の「年5日分を穴埋めするために夏期休暇や年末・年始休暇を削る」という手口はどうか。夏期休暇や年末・年始休暇は特別休暇と呼ばれるものだが、それを減らして年5日の有休で穴埋めし、労働日数を確保しようという姑息な手口だ。しかし今回の法律改正は休日を増やすことが目的であり、明らかに立法趣旨に反する。厚労省のパンフレットでもこう戒めている。
「特別休暇について、今回の改正を契機に廃止し、年次有休休暇に振り替えることは、法改正の趣旨に沿わないものであるとともに、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより特別休暇に振り替えた後の要件・効果が労働者にとって不利益と認められる場合は、就業規則の不利益変更法理に照らして合理的なものである必要があります」
つまり、特別休暇の有休への振り替えは法の趣旨に反し、労働者の不利益になるので法律違反になる可能性がありますと言っているのだ。同じ内容が労働基準監督署にも通達されているので、もし会社がこんなことをやったら労基署に告発するべきである。
3の「週2日の休日のうち、所定休日の1日を出勤日とする」も似たような手口だ。労働基準法では少なくとも週に1回の休日(法定休日)を与えなければならない。週休2日の場合、もう一日は会社が付与をする「所定休日」だ。この1日の休日を出勤日扱いにして、年5日の義務を解消しようとするものだ。これも明らかに休日を増やそうとする法律の趣旨に反する。そもそも入社前に「週休2日制」という労働条件などの雇用契約を交わして入社したのに、途中で変更するのは労働条件の不利益変更になる。
仮に会社がそのように就業規則を変更しても、裁判になれば、法律回避目的の就業規則変更として合理性はないと判断する可能性が高い。「変更します」と言ってきたら、同意しないで労基署に相談すれば、何らかの指導をしてもらえるだろう。しかし、こんな手口を使う会社は有休すら与えたくないというのが見え見えであり、できれば退社したほうがよいだろう。
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