連載
「会社員消滅時代」到来? 令和時代の“自由な働き方”に潜む落とし穴:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
平成30年間で会社の「働かせ方」は変わり、働く人との“信頼”は崩壊した。令和時代の働き方はどうなるのか。政府が公表している報告書を読み解くと、「自立」という美しい言葉が目立つ。だが、そこには落とし穴があって……。
バブル崩壊をきっかけに「人」を「人」と見ず、単なる「コスト」として考える経営者が増殖し、都合よく「働かせ方」を変えた。働く人と企業とのギブアンドテイクの関係を無節操に壊し、「働き方改革」という民主的な香りを漂わせるスローガンのもと、企業支援策ばかりが横行するフェーズに突入しました。
平成初期に「中年のビジネスマン」が具体的にどんな働き方をし、その働き方にどんな感情を抱いていたかは、日経ビジネスのコラムに紹介してあるので、興味のある人はご覧いただくとして、こちらでは「令和時代に待ち受けている未来」をお話しします。
政府が提示した「幸せな働き方」の未来
今からさかのぼること2年半前の2016年(平成28年)8月3日。第3次安倍第2次改造内閣が発足し、働き方改革担当大臣が誕生しました。実はその前日、厚生労働省のWebサイトに、私たちの「未来予想図」となる報告書が掲載されたことはあまり知られていません。
報告書のタイトルは、「『働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために』懇談会 報告書」。従来の枠組みにとらわれずに、20年先を見据えて「働き方」について議論することを目的として同年1月に発足した、厚労省の「働き方の未来2035」懇談会の政策提言書です。
この報告書で2035年の「幸せな働き方」の前提となっているのが、VR(仮想現実)やAI(人工知能)による技術革新です。
関連記事
- 「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”
40歳前後になった「就職氷河期」世代に対する支援に、国を挙げて取り組むことを安倍首相が表明した。しかし、就職時の不況や非正規雇用の拡大など、さまざまな社会的要因によって追い詰められた人たちの問題は根が深い。実効性のある支援ができるのか。 - 働き方改革で残業が減らない理由 ちっとも進まない「経営者改革」
働き方改革について7割の人が「実感なし」と回答したアンケート結果が話題になった。「長時間労働の削減」が改革の代名詞のようになってしまっているが、本来はそうではない。生き生きと働ける社会にするために必要なのは「経営者改革」だ。 - 働き方改革と無縁の「深夜国会」 膨れ上がる税金と“魔”の高揚感
新年度予算案の衆院通過を巡って「深夜国会」が開かれ、衆院職員の残業代が一晩で1800万円に上ったことが話題になった。さまざまな議論があるが、筆者が注目するのは深夜国会の「高揚感」。危険な高揚感で満たされないように「国会とは何か」を議論すべきだ。 - “やりがい搾取”に疲弊 保育士を追い詰める「幼保無償化」の不幸
消費増税まであと1年。同時に「幼児教育・保育無償化」も始まる。しかし「保育士の7割が反対」という調査結果が示され、受け皿の不足と負担増加が懸念されている。このまま無償化するのは「保育士は灰になるまで働け!」と言っているのと同じなのではないか。 - 減り続ける「管理職のイス」と“死亡率”急上昇のリアル
「管理職になりたくない」人が6割を占める調査結果が問題になっているが、管理職の椅子が減っている現状を考えれば、希望者は4割で十分。それよりも、管理職の在り方そのものを見つめ直す必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.