連載
「会社員消滅時代」到来? 令和時代の“自由な働き方”に潜む落とし穴:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)
平成30年間で会社の「働かせ方」は変わり、働く人との“信頼”は崩壊した。令和時代の働き方はどうなるのか。政府が公表している報告書を読み解くと、「自立」という美しい言葉が目立つ。だが、そこには落とし穴があって……。
報告書によると(抜粋し要約)、
「最新技術を最大限に働き方に生かせば、どこでもいつでも、場所に拘束されることなく働けるようになり、工場のように、実際にその現場に人がいなければならない作業はロボットがやるようになる。その頃には人口が大幅に減少し、人手不足が一段と深刻になるが、AIなど科学技術の発達で自動化・ロボット化が進み、介護や子育て、家事などの負担から働く人が解放される」
「健康管理のシステムにより要介護状態になる前に十分な予防的措置がなされ、かつ介護ロボットの導入で介護負担の大きな改善が想定される。施設に入れなくても、自宅で遠隔の安全管理システムが見守りを行ったり、移動ツールによって要介護者の外出が容易になるなど、働く人の負担は大きく軽減されているだろう」
……とのこと。
既にこの段階で、私の脳内のサルやらウサギやらタヌキが「おいおい! ちょっと待て!」と暴れまくっているのですが、報告書の神髄はこの先にあります(内容を抜粋し要約)。
【長時間労働について】
- 同じ空間で同時刻に共同作業することが不可欠だった時代は、そこに実際にいる「時間」が評価指標の中心だった。だが、時間や空間にしばられない働き方への変化をスムーズに行うためには、成果による評価が一段と重要になる。その結果、不必要な長時間労働はなくなり、かつ、是正に向けた施策が取られるようになる。
【会社との関係】
- 空間と時間を共有することが重要だった時代は、企業は一つの国家やコミュニティーのような存在だったが、2035年の企業は、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となる。プロジェクト期間が終了すれば、別の企業に移動する形になっていく。その結果、企業に所属する期間の長短や雇用保障の有無等によって「正社員」や「非正規社員」と区分することは意味を持たない。
- 兼業や副業は当たり前になる。一つの会社に頼り切る必要もなくなるため、不当な働き方や報酬の押し付けを減らせる。
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