休止間近!「上野動物園モノレール」が担った“意外な役割”:日本最古、62年間の軌跡(2/4 ページ)
11月1日から、日本最古のモノレールが運行を休止する。上野動物園モノレールだ。300メートルを結ぶ約1分半の路線だが、62年間を振り返ると、さまざまな困難を乗り越えた歴史があった。休止前にその歩みを振り返ってみては。
役割を終え、「廃止論」が持ち上がる
上野動物園モノレールの運行は華々しく始まった。開業の式典では、動物園のチンパンジーが運転士に花束を渡すというパフォーマンスを実施。東京の“新名所”として、物珍しさからたくさんの人がモノレールに乗るために訪れたという。
しかし、7年後の1964年にいったんその役割を終える。なぜなら、羽田空港へのアクセス線となる東京モノレールが開通したからだ。モノレールが公共交通として本格的に運用されるようになったことで、「“実験”としての役割は終わった」(担当者)。それでも、そのときにはすでに動物園の来場者に親しまれる存在として、新たな道を歩もうとしていた。
67年には2代目の車両が運行を開始し、ジャイアントパンダ来園の翌年の73年度には年間150万人が乗車。過去最高の利用者数を記録している。
ところが、2代目車両の使用年数が10年を超えていた80年、「廃止論」が持ち上がった。モノレールの利用者は相変わらず多かったが、車両更新には時間もコストもかかる。当初の「実験」としての役割もとっくに終えている。公共交通の必要性を考えた上での廃止論だった。
この流れに「待った」をかけたのは、動物園のモノレールに慣れ親しんでいた利用者たちだ。「存続してほしい」という要望が多く寄せられたことが、3代目車両の製造を後押しした。85年に運行を開始した新車両は、それまでよりも窓が大きくなり、後にはパンダのイラストもあしらわれた。
しかし、廃止論はそこでなくなったわけではない。3代目車両が老朽化してきたころ、交通局では再び「存続は厳しい」という意見が挙がった。一方で、動物園を運営する東京都建設局は「必要な施設」という意向だったという。そこで、交通局が担ってきたモノレール運営を、建設局と分担することに。施設を建設局が所有し、交通局は運行に専念することで、存続することができた。
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