副業解禁の盲点 経験者が直面した「社外活動と退職は裏切り」という現実:専門家のイロメガネ(2/4 ページ)
終身雇用が終わりを告げるとともに、副業や兼業を容認する動きが目立ってきています。企業はそのための制度を整えていますが、副業や兼業に対する同僚の見方というソフト面は、まだ遅れています。実例と共に、副業解禁の見えない壁を確認していきましょう。
社内か社外か、どちらかを迫る先輩の「助言」
もう一人はTさんです。
中高年でのキャリアチェンジは難しいという転職市場の通説を破り、Tさんは40歳でエンジニアからソーシャルビジネスの企画立案担当者へと大きくキャリアを方向転換しました。今は、大手不動産会社の運営する一般社団法人で、町おこしや地域創生に従事しています。
Tさんは、Nさんと同じ大手通信機器メーカーにネットワークエンジニアとして勤めていました。しかし通信業界が技術革新による大きな変革期を迎えたのを見て、自分のスキルにも自社の将来にも危機感を持つようになり、社外の場にその活路を求めました。そこで出会ったのがフューチャーセンターやワールドカフェといった、未来志向の対話型問題解決活動です。
Tさんは有限責任事業組合(LLP)を設立して、本格的に社外活動にも取り組み始めました。社外の人を自社にも呼び込んで対話イベントを行うといったTさんの取り組みは、当時の社長にも関心を持たれました。しかしある時、職場の先輩から「会社の仕事に専念するか、転職、もしくは独立してやりたいことを続けるか、どちらかにした方がよい」と”助言”されることになります。
その助言により、かえってTさんの退職への気持ちは固まりました。確かに指摘された通り、会社の仕事に比べ、対話活動への情熱は増す一方でした。
ただし、家族もいるのでいきなり独立起業のリスクを取ることにはためらいがありました。そんな時に誘いの声をかけてきたのが、対話の活動を通じて知り合った今の組織だったのです。
大手不動産会社が母体となった組織なので経営の安定性には不安はないものの、提示されたのは正社員ではなく、業績評価を元に契約更新がなされる「契約社員」のポジションでした。しかし、疑問を感じながら悶々とした日々を送るよりは、情熱を傾けられる道を歩みたいという思いが勝りました。割増退職金をもらえる45歳まで待つとかえって条件や環境が厳しくなる、と考えて退職を決意しました。
子どもも小さい中で、1年ごとの契約という雇用形態に不安はなかったかと尋ねると「LLPで実績を上げてきた自信が、外の世界に一歩を踏み出す力になりました。LLPとしては収入もあったので、自分のやることがお金になるめどもついていました」と答えてくれました。
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