中小企業で男性社員の育休取得率100%を実現してみた:専門家のイロメガネ(3/5 ページ)
厚労省が進める男性社員の育休取得。「イクメンプロジェクト」として形は整ってきたが、育休に絡むトラブルが炎上するなど、定着への道のりは厳しい。男性社員の育休取得100%を実現した企業の経営者が、制度を円滑に運用するための工夫について説明する。
育休取得の当事者とは
炎上した企業の育休社員がどういう態度だったかは筆者の知るところではないが、育休を取得する際に当事者が最も重視すべきは周囲への配慮だ。
厚労省も含めて私たちは、男性育休問題の当事者は企業(雇い主)と労働者の二者のみだと捉えてしまいがちだ。その場合に取得する本人は育休を会社に対する当然の権利として行使してしまうが、実際には三番目の当事者として周囲の同僚たちもいることを考えなければならない。
会社がどれだけ制度を整え人員をそろえようが、フォローをするのは休んだ者の周りの同僚である。穴埋め要員として育休期間だけ全く同じ能力を持った人を雇用する、などといったことは不可能だからだ。
筆者が経営する会社で男性全員が育休を取得した際も、「会社に対する権利」より「周囲への配慮」に軸足を置いた者は非常にスムーズに育休の取得から復帰を果たした。
周囲の同僚が受け入れやすかった要因として、パートタイマーを含む他の社員のほぼ全員が子育て世代の女性だった点も大きい。彼女たちは日ごろから子供の都合優先で出勤しているため、もともとは自分たちがフォローしてもらう側だ。当然ながらお互いへの配慮さえしっかりできていれば、フォローしあうことに抵抗はない。
しかし残念なことに、現在の日本では若いころには育休そのものがなかったような社員(上司や先輩)が職場にうじゃうじゃいる。その中にはどんなに配慮しても快くフォローしてくれない人がいてもおかしくない。そんな人が上の立場にいるのだから男性の育休が進むわけもない。
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