テレビ局が吉本興業を出入り禁止にすべき理由:専門家のイロメガネ(3/8 ページ)
吉本興業の芸人による闇営業。この事件で最も重要なことは、事務所のあずかり知らない所で所属芸人が詐欺集団の会合に参加したことであり、芸人をマネジメントすべき吉本興業がそれを防げなかったことだ。本来研修を受けるべきは芸人ではなく、吉本興業の経営陣ではないのか。
暴排条例が求める「交際の禁止」
暴排条例では条例の基本理念を以下のように説明している。
「暴力団を恐れない」
「暴力団に金を出さない」
「暴力団を利用しない」
+「暴力団と交際しない」
(東京都暴力団排除条例について 警視庁)
特に「交際しない」という部分が、警視庁のWebサイトでは赤字で大きく強調されている。
テレビ局はあくまで芸能事務所と出演契約を結び、契約に基づいて所属タレントはテレビ番組に出演している。そしてテレビ局と事務所の間で結ばれた契約書には、当然のことながら反社条項が含まれているはずだ。
事務所と契約書を交わしていないと多数の吉本芸人が公言しているが、これはトラブル防止やコンプライアンス以前の話だ。これまでもコンプライアンスに力を入れてきたというが、最初に手をつけるべき問題ではないのか。
先日宮迫氏がレギュラー番組の降板をすることになり、後任として同じく吉本興業の芸人が就任したと報じられている。後任の芸人が誰なのかは全く関係なく、テレビ局が反社条項についてアヤフヤな状況にある芸能事務所と取引を続ける意図はどこにあるのか。繰り返しになるが今回のトラブルは芸人個人の問題ではなく、事務所のコンプライアンスとガバナンスに関わる問題だ。
公共の電波を使用したサービスを提供するテレビ局として、どのような判断に基づいて取引継続の意思決定が行われたのか? コンプライアンス上問題がないと考えているのか? テレビ局には説明責任がある。
(以下、※のマークがついた箇所は全て警視庁HP・東京都暴力団排除条例Q&Aより引用・抜粋)
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